未払賃金等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告(国立大学法人)の元職員である原告が、産官学連携コーディネーターとして被告病院内のセンターに勤務していた平成27年4月から平成29年3月までの在職期間中、上司である教授らから数々のパワーハラスメントを受けたと主張し、被告に対し不法行為(使用者責任・民法715条)に基づく損害賠償として慰謝料500万円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。原告は10項目のパワハラ行為を主張し、会議での暴言、長時間の会食における威圧的言動・身体接触、事実に基づかない叱責と業務変更、報告書への過度に辛辣なコメント、外部講演手続に関する不当な対応等を訴えた。なお、時間外労働に係る未払賃金等の請求部分は和解により終了している。 【争点】 主な争点は、原告が主張する10項目のパワハラ行為(パワハラ①~⑩)について不法行為(使用者責任)が成立するか否か、及び損害額である。具体的には、(1)会議における教授の「お前なんかに被告を良くしてもらおうなんて思わんわ」との暴言の違法性、(2)シンポジウム会場変更に伴う過大な業務負担の有無、(3)約5時間の会食における威圧的発言・身体接触の違法性、(4)事実関係の調査を尽くさないまま行われた病院長による叱責と業務変更の違法性、(5)席替えや報告書提出指示等の業務管理の当否、(6)報告書再提出時の辛辣なコメントが指導の範囲を逸脱するか、(7)外部講演手続に関する対応の違法性、(8)不正アクセス調査や受診命令・雇止めの適法性が争われた。 【判旨】 一部認容(慰謝料50万円)。裁判所は、原告主張の10項目のうち5項目について不法行為の成立を認めた。第一に、会議での教授の暴言は原告の意見への反論ではなく攻撃的な罵倒であり違法と認定した。第二に、業務上の接点のない副センター長が設けた約5時間の会食において威圧的発言や腕への身体接触があり、同席者もパワハラと受け取られかねないと感じていたことから不法行為を認めた。第三に、病院長が専らセンター長からの報告のみに基づき、報告体制上の責任がない原告に対し事実に基づかない注意を与え業務内容を変更したことは著しく不当と判断した。第四に、准教授が報告書再提出時に「意味不明」「本当に開発する気があるのですか」等の辛辣なコメントを付したことは指導の範囲を逸脱し違法とした。第五に、外部講演手続について明確な説明をせず反抗的態度を理由に講演を認めないかのような発言をしたことは優越的地位の利用として違法と認定した。他方、会場変更や精算業務の負担、席替え、看護業務の指示、週間報告書の提出指示、不正アクセス調査、受診命令・雇止め等については違法性を否定した。