脅迫、不正競争防止法違反、威力業務妨害
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、政党党首であった被告人が、(1)同党を脱退した元党員に対し、YouTubeやSNSを通じて「徹底的に叩き続ける」「人生を潰す」などと執拗に発信して同人及びその親族の身体・自由・名誉に危害を加える旨告知した脅迫、(2)放送協会の業務委託先従業員と共謀し、同協会の営業秘密である受信契約者情報50件をビデオカメラで撮影して領得した不正競争防止法違反(営業秘密の領得)、(3)同情報を「人質」として利用し、放送協会に対して情報の公開・拡散を示唆して要求を行い、職員に訪問謝罪等の対応を余儀なくさせた威力業務妨害の3件で起訴された事案である。不正競争防止法21条1項3号は、営業秘密の管理に係る任務に背いてその営業秘密を領得する行為を処罰するもので、本件では業務委託先従業員を通じた間接的な情報取得が同条の「領得」に当たるかも問題となった。 【争点】 弁護人は、第1の脅迫につき害悪の告知は名誉のみに対するもので政治活動として正当業務行為に該当すると主張し、第2の不正競争防止法違反につき被告人には不正の利益を得る目的もD協会に損害を加える目的もなく撮影は従業員の身分証明目的であったと主張し、第3の威力業務妨害につき被告人に情報拡散の真意はなくD協会も意思を制圧されていないとして「威力」に該当しないと主張した。裁判所は、第1について、被告人の発言は被害者の名誉のみならず身体・自由への害悪告知を含み、過激な表現を執拗に用いた方法は社会的相当性を逸脱しており正当業務行為に当たらないと判断した。第2について、被告人が本件情報を撮影した態様(数分間至近距離で正面から撮影し内容を逐一確認)から情報取得の意図は明らかであり、実際に第3の行為で利用していることからも不正利益目的・加害目的の双方が認められるとした。第3について、情報の公開・拡散を示唆する言動を公然と繰り返しYouTubeに期限付き動画を投稿した行為は人の意思を制圧するに足りる「威力」に該当し、職員が通常不要な対応を余儀なくされたことで業務妨害も認められるとして、政治的表現の自由を考慮しても不法な手段による以上違法性は阻却されないと結論付けた。 【判決】 懲役2年6月・執行猶予4年(求刑:懲役2年6月及び罰金30万円)。前科がないこと等を考慮しつつ、営業秘密の不正取得とその利用による業務妨害という一連の犯行態様が受信契約者の個人情報を流出の危険にさらしたことを重視し、罰金刑は経済的利得目的が認められないとして併科しなかった。