殺人未遂等被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、勤務先の上司である被害者(当時61歳)の日頃の言動に一方的に恨みを募らせ、令和5年7月14日午前7時10分頃、高松市内の路上で通勤中の被害者を襲撃した。被告人は帽子とマスクで顔を隠し、ゴルフクラブと果物ナイフを持参して被害者の通勤経路に赴き、背後からゴルフクラブを頭上から振り下ろして右頸部付近を殴打し(ゴルフクラブはヘッド付け根から破断)、さらにもみ合いの末、四つん這いになった被害者の胸部を果物ナイフで突き刺した(胸骨を貫通し刃が根元から破断)。被害者は全治約3か月の右血気胸、肺裂創、胸骨損傷等の重傷を負ったが、殺害には至らなかった(殺人未遂)。加えて被告人は、平成8年頃から担当していた労働組合及び互助会の経理事務において、合計約96万円を業務上横領し、発覚を免れるため銀行通帳のPDFデータを5回にわたり改ざんして組合役員に提出した(有印私文書偽造・同行使)。 【争点】 殺人未遂における殺意の有無。被告人は暴行の事実は認めつつ、殺意はなかったと主張した。 【判旨(量刑)】 裁判所は殺意を認定した。ゴルフクラブによる殴打について、被告人は頸部を狙ったもので頭部は狙っていないと供述したが、鈍器で面積の狭い頸部をわざわざ狙ったという説明は不自然であり、仮に頸部を狙ったとしても頭部に直撃する可能性は高く、致命傷となる危険性が高いことから、死亡の危険性を認識しつつ殴打に及んだと認定した。果物ナイフによる刺突について、被害者の証言は具体的かつ創傷の状況と整合しており信用できるとした一方、被告人の「振り払うように突き出したら刺さった」との供述は、胸骨貫通・ナイフ破断という客観的状況と整合せず信用できないとした。被告人が意図的に胸部を刺したと認定し、殺意を肯定した。 量刑については、計画的殺害とまでは認められないものの、死の危険性が相当に高い行為をあえて行った意思決定は厳しく非難されるべきであり、殺人未遂としては重い部類に位置付けられるとした。横領・文書偽造も信頼を逆手に取った利欲的犯行であり軽視できないとし、被害弁償や慰藉の措置が一切なく、反省の姿勢も十分とは認められないとして、懲役9年(求刑懲役10年)を言い渡した。