AI概要
【事案の概要】 福岡市立小学校に教諭として勤務していた亡A(女性)が、平成25年10月にくも膜下出血を発症して死亡した。亡Aは、赴任初年度にもかかわらず6年生の担任に加え、学年主任及び生徒指導主任を兼務していた。夏季休暇明け以降は、同学年の女性教諭の妊娠に伴う業務サポート、修学旅行の準備、教育実習生の指導、PTAバザーの準備等が重なり、業務負担が増大していた。地方公務員災害補償基金は亡Aの死亡を公務災害と認定したが、亡Aの夫である原告が福岡市に対し、安全配慮義務違反に基づく損害賠償約2852万円を求めた。 【争点】 主な争点は、(1)亡Aの時間外勤務時間数(量的過重性)、(2)時間外勤務時間数以外の負荷要因(質的過重性)、(3)被告が基金の公務災害認定に反する主張をすることの可否、(4)被告の安全配慮義務違反の有無、(5)損害額であった。特に、基金が公務災害と認定した事案において、設置者である市が民事訴訟で公務の過重性を争えるかが問題となった。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、亡Aの時間外勤務時間数について基金の認定に相応の合理性を認めつつも、発症前30日間の職場73時間・自宅29時間という時間数は、医学的知見に基づく基準(発症前1か月間に100時間等)を満たさないか、その水準に近い程度にとどまると判断した。質的過重性についても、亡Aは学級担任と学年主任の兼務経験があるベテラン教諭であったこと、主幹や同僚教諭からのサポート体制が組まれていたこと、生徒指導主任の業務が個別対応を頻繁に求められるものではなかったこと等から、著しい負荷が生じていたとは認められないとした。また、基金の公務災害認定は被災公務員の迅速な保護を目的とする制度であり、市が民事訴訟で異なる主張をすることは信義則に反しないと判断し、安全配慮義務違反を否定した。