公金支出差止請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 長崎県は、特定複合観光施設区域整備法(IR整備法)に基づき、民間事業者と共同で九州・長崎特定複合観光施設区域整備計画(本件計画)を作成し、令和4年4月に国土交通大臣に認定を申請した。これに関連して、長崎県知事Aは、法律事務所との間で法務アドバイザリー支援業務委託契約(委託料5665万円)を、監査法人との間で審査及び計画・モニタリング実施支援業務委託契約(委託料5336万1000円)をそれぞれ締結した。長崎県の住民である原告らは、本件計画が資金調達の確実性に関する要求基準(要求基準4)に適合しないことは明らかであり、上記各業務委託契約の締結及びこれに基づく支出命令は不必要な経費の支弁として地方自治法232条1項に違反する違法な財務会計行為であると主張して、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、被告(長崎県知事)に対し、知事個人への損害賠償請求を求める住民訴訟を提起した。 【争点】 1. 各業務委託契約の締結及び支出命令の違法性(地方自治法232条1項違反の有無) 2. 長崎県知事の故意・過失の有無 【判旨】 裁判所は、原告らの請求をいずれも棄却した。まず争点1について、IR誘致自体は知事の裁量的な政策的判断に委ねられるべき事柄であるとした上で、区域整備計画の認定審査に当たっては多種多様な法的及び財務・会計上の論点が存在し得ること、申請後も審査委員会から複数回にわたる照会がなされ県としてこれに対応する必要があったことから、専門家から法務・財務・会計面のサポートを受ける必要性があったことは否定できないとし、各業務委託契約の締結は知事の裁量権の範囲を逸脱・濫用するものとは評価できないと判断した。原告らが主張する本件計画の要求基準4不適合の明白性については、審査委員会の審査自体が約1年半にわたり継続して行われたこと、申請前に専門家によるコミットメントレター等のレビューが実施されていたこと、日本型IRが世界初の制度であり資金拠出の約束の程度には限度があり得ることなどを指摘し、申請時点で認定を受けられないことが明らかであったとはいえないとした。各業務委託契約の締結に違法性がない以上、これに基づく支出命令についても違法性は認められないと結論づけた。