AI概要
【事案の概要】 本件は、ベトナムから技能実習生として来日していた被告人が、令和6年2月2日、交際相手であるA方において、自己が死産した男児の死体をビニール袋に入れた上、キッチン横のごみ箱内に生ごみ等と共に投棄し、さらにケーキの紙箱を上から被せて隠匿したという死体遺棄の事案である。被告人は、令和5年7月頃に来日し、同年11月頃から職場の同僚Aと交際を開始したが、同年12月頃に元交際相手との間の子を妊娠していることに気付いた。しかし、妊娠が会社や管理団体に発覚すれば帰国させられること、Aに知られれば別れを告げられることを恐れ、妊娠を誰にも打ち明けず産婦人科も受診しなかった。出産後も、帰宅したAや病院の医師に対して交通事故に遭ったと虚偽の説明を繰り返し、最終的に体内に胎盤が残っていると医師から指摘されてようやく出産の事実を認めた。 【争点】 第一の争点は、被告人がごみ箱内に死体を入れた行為が死体遺棄罪における「遺棄」に該当するか否かである。弁護人は、死体をごみ箱から取り出すことは容易であり終局的処分には至っていないこと、隠匿時間が約半日に過ぎないことから、習俗上の埋葬等と相いれない処置とはいえないと主張した。第二の争点は故意の有無であり、弁護人は、被告人は死体を一時的に保管し後で取り出すつもりであったから故意がないと主張した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、死体遺棄罪の「遺棄」とは習俗上の埋葬等とは認められない態様で死体を放棄又は隠匿する行為であるとした上で、本件行為について、紙箱を被せたことにより外部から死体を視認できない状態を作出し、発見を困難にした程度が大きかったと認定した。現にCやBがごみ箱を開けても死体に気付かなかった事実がこれを裏付けるとした。さらに、死体を生ごみと一緒にごみ箱に入れる行為は、死者に対する敬けん感情を著しく害し、習俗上の埋葬等と相いれない処置であるとして「遺棄」に該当すると判断した。故意についても、被告人が隠匿状態を作出することを認識した上で意図的に行為に及んでいること、出産後も頑なに事実を秘匿し続けていたことなどから優に認定できるとした。量刑については、犯行の悪質性を認めつつも、技能実習生という立場での妊娠発覚への恐れや、予期せぬ死産による心身の著しい悪化など、被告人の意思決定過程には同情できる点があるとして、懲役1年6月・執行猶予3年(求刑どおり懲役1年6月)を言い渡した。