AI概要
【事案の概要】 被告人(元警察官)は、令和5年12月31日午後9時30分頃から午後9時55分頃までの間、北九州市内のビルにおいて、実妹である被害者(当時55歳)に対し、頭部及び顔面等に複数回鈍体を作用させる暴行を加えた。被害者は硬膜下腔出血、くも膜下腔出血及び左前頭蓋窩骨折等の傷害を負い、翌日午前5時52分頃、外傷性脳障害により死亡した。被告人は事件当日、スナックで被害者らと飲酒した後、実家に戻った際、さらに酒を飲みに行こうとしたのを被害者に止められたことに立腹し、犯行に及んだものと認定された。被告人は暴行後、被害者を路上に運び出し、性犯罪を装うためにズボンと下着を脱がせて放置した上、自らは布団に入って横になっていた。 【争点】 弁護人は、被告人が本件暴行当時、酩酊により心神耗弱の状態にあったと主張した。その根拠として、暴行の記憶がないこと、仲の良い妹に対する苛烈な暴行は平素の人格からかけ離れていること、暴行後に被害者を路上に放置し性犯罪を装うなどの不合理な行動をとったことを挙げた。これに対し裁判所は、犯行前後の被告人の言動(スナックでの会計、帰路での正常な歩行、犯行約40分後の警察官への応答など)から、犯行時に限って認識能力や行動制御能力が著しく減退していたとは考え難いと判断した。また、過去にも飲酒時に元妻やその弟に暴行を加えた前歴があり、本件暴行は被告人の平素の人格と異なる行動とは評価されないとした。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人に完全責任能力を認めた上で、懲役9年の判決を言い渡した(求刑懲役10年、弁護人意見懲役5年)。量刑理由として、飲みに行くのを止められたという身勝手な動機、無抵抗の被害者に対する一方的かつ極めて強度の暴行、被害者を路上に放置した残虐性、落ち度のない被害者の生命が失われた結果の重大性を指摘した。さらに、過去の飲酒時の粗暴行為から自らの危険性を認識し得たにもかかわらず自制しなかった点で酩酊を有利に斟酌できないとし、公判においても逃避的・他責的な弁解に終始し、警察官としての経験がありながら遺族への対応も不誠実であるとして、重い刑事責任を認定した。