AI概要
【事案の概要】 学校法人に対する21億円の業務上横領事件の被疑者として逮捕・勾留され、起訴されたものの第一審で無罪判決が確定した原告(不動産会社の元代表取締役)が、検察官による違法な逮捕・勾留・公訴提起及び違法な取調べにより損害を被ったとして、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償金7億7000万円等の支払を求めた事案である。原告は、学校法人の経営権取得を企図する人物らに18億円を貸し付けたところ、その資金が横領に使われたとして共謀を疑われたが、刑事裁判では無罪が確定していた。 【争点】 ①公訴提起の違法性(争点1):検察官が収集した証拠資料等を総合勘案して、有罪と認められる嫌疑があるとした判断が合理性を欠くか。具体的には、検察官の見立ての合理性、客観的証拠(スキーム図等)の評価、共犯者とされた者らの供述の信用性判断、違法な取調べによる供述の信用性への影響が争われた。②逮捕・勾留の違法性(争点2)。③取調べ検事による原告の黙秘権・弁護人選任権等の侵害の有無(争点3)。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を棄却した。争点1について、検察官の見立て自体には一定の合理性が認められるとした。客観的証拠の評価については、学校法人への貸付を前提とする書面が複数存在し、後方視的には検討不十分と批判される部分があるとしつつも、関係者の供述を総合すると、検察官が本件横領スキームが当初から存在したと判断したことが全く不合理とまではいえないとした。共犯者の供述については、取調べ検事による威迫的取調べ(机を叩く、怒鳴る、侮辱的言動等)の存在を認定し、付審判請求決定でも問題視された取調べであったと指摘しつつも、供述者が弁護人と相談の上で供述調書に署名していること等から、供述の信用性を肯定した検察官の判断が不合理とまではいえないとした。もっとも、主任検察官が取調べの録音録画を視聴しなかったことは「容易に正当化できるものではない」と批判し、統括審査検察官制度の有効性にも疑義を呈した。結論として、公訴提起段階では、経験則・論理則に照らして到底合理性を肯定できない程度には達していないとした。争点2・3についても違法性を否定した。