損害賠償請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 亡Dは、昭和38年から昭和46年まで勤務先工場で石綿セメント管の製造作業に従事し、粉じんに暴露された。平成11年10月にじん肺健康診断を受診し、平成12年5月30日にじん肺管理区分を管理二とする決定を受けた。亡Dは令和2年5月8日、国がじん肺の発生・増悪を防止するための規制権限を行使しなかったことが違法であるとして、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めて提訴したが、令和2年6月14日に死亡し、法定相続人である控訴人らが訴訟を受継した。原審は、除斥期間の起算点をじん肺健康診断受診日(平成11年10月19日)と認定し、訴え提起時には既に20年の除斥期間が経過しているとして請求を棄却した。 【争点】 主たる争点は、控訴人らの損害賠償請求権に係る除斥期間(改正前民法724条後段)の起算点である。具体的には、起算点が亡Dがじん肺健康診断を受診してエックス線写真撮影を受けた平成11年10月19日(被控訴人・国の主張、原審の判断)か、じん肺管理区分を管理二とする行政上の決定を受けた平成12年5月30日(控訴人らの主張)かが争われた。 【判旨】 控訴認容・原判決取消し。大阪高裁は、じん肺の進行性疾患としての特質(病状の進行が現在の医学では確定できないこと、管理区分ごとに損害が質的に異なること)に鑑み、最高裁平成6年判決及び平成16年判決を踏まえ、じん肺被害を理由とする損害賠償請求権の除斥期間の起算点は、最終の行政上の決定を受けた時であると判断した。じん肺に罹患した事実はその旨の行政上の決定がなければ通常認め難く、平成6年最判が消滅時効の起算点を最終の行政上の決定時と明確に判示し、平成16年最判が除斥期間の起算点を損害発生時と判示していることからすれば、除斥期間の起算点も行政上の決定時と解すべきであるとした。本件では亡Dが管理二の決定を受けた平成12年5月30日が起算点となり、令和2年5月8日の訴え提起時には未だ除斥期間を経過していないとして、控訴人らの請求を全部認容した。