損害賠償等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 長崎県警察の警部補Dが、上司によるパワーハラスメント被害を受けながら過酷な長時間労働に従事した結果、単身赴任先の自宅で自死した事案である。Dの相続人である妻(原告A)及び子ら(原告B・C)が、長崎県警察の設置者である被告(長崎県)に対し、(1)安全配慮義務違反を理由とする国家賠償法1条1項に基づく損害賠償、(2)未払割増賃金(時間外・休日・深夜労働分)の支払、(3)労基法114条に基づく付加金の支払をそれぞれ求めた。なお、Dの自死につき被告側公務員の安全配慮義務違反があることは当事者間に争いがなかった。 【争点】 (1)Dの死亡に伴う損害額、(2)宿日直勤務に関する勤務時間条例及び宿日直規則が労基法に違反し無効か、(3)警察署における宿日直勤務について人事委員会の許可があったか、(4)年次休暇・夏季休暇を取得しつつ出勤した場合に時間外手当の支払を要するか、(5)付加金請求の当否が争われた。 【判旨】 裁判所は、争点(2)について、勤務時間条例に「人事委員会の許可を受けて」との文言がなくとも、地公法58条5項により人事委員会が労働基準監督機関の職権を行使することは明らかであり、条例は労基法41条の適用を排除する趣旨ではないとして、条例・規則は法令違反に当たらないと判断した。争点(3)については、許可証そのものは存在しないものの、県人事委が許可済みとの認識で実態調査を実施していた経緯等から、遅くともDの赴任時までに許可が与えられていたと認定した。争点(4)については、年次休暇等を申請しつつ出勤した場合は申請を撤回したとみるのが相当であり、正規の勤務時間内の勤務は時間外勤務と認められないとした。争点(5)については、月200時間前後の時間外労働の常態化、上司による過少申告の指示、正確な勤務実態把握の懈怠等を考慮し、割増賃金と同額の付加金の支払を命じた。原告らの請求を概ね認容し、訴訟費用の97%を被告負担とした。