裁決取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 小型船舶操縦士である上告人が船長として操船する漁船(甲船)が、夜間、鹿児島県南さつま市の漁港船だまりを無灯火で出発し航行中、沖合から入港しようとしていた別の漁船(乙船)と衝突する事故が発生した。この事故により、甲船・乙船ともに損傷し、上告人は右外傷性気胸等の傷害を負った。門司地方海難審判所は、上告人に対し、無灯火航行及び動静監視不十分の職務上の過失があったとして、小型船舶操縦士の業務を1か月停止する懲戒裁決をした。一方、入港の慣行に反するコースを高速で航行していた乙船の船長は懲戒しないとされた。上告人が本件裁決の取消しを求めて出訴した。 【争点】 上告人の無灯火航行及び動静監視不十分が本件事故に係る海難について職務上の過失に当たるか。具体的には、原審が本件裁決と異なる事実(乙船の速力・航跡・衝突地点)を認定しながら、その異なる事実を前提とした場合に上告人の注意義務違反と事故との因果関係が認められるかが問題となった。 【判旨】 最高裁は、原判決を破棄し、東京高裁に差し戻した。その理由として、原審は乙船の速力・航跡・衝突地点について本件裁決と異なる事実を認定しているにもかかわらず、両船の衝突に至る経過を具体的に認定説示していないと指摘した。すなわち、上告人が乙船を初めて視認した時点における両船の位置関係や速力が明らかでなく、動静監視をしていれば衝突を回避できたとはいえないこと、また、甲船が所定の灯火を表示していれば乙船側で衝突を回避できたともいえないことから、原審は上告人の行為と事故との因果関係を十分に認定していないとした。したがって、上告人に職務上の過失があるとした原審の判断には、職務上の過失に関する法令の解釈適用を誤った違法があるとして、更に審理を尽くさせるため差し戻した。裁判官全員一致の意見。