総長解任処分取消等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告は、国立大学法人北海道大学(被告北大)の総長(学長)であったが、被告北大の総長選考会議は、原告の非違行為30件を認めて文部科学大臣に原告の総長解任の申出(本件解任申出)をした。これを受けた文部科学大臣は、総長選考会議が認定した非違行為のうち28件を認定し、国立大学法人法17条2項に規定する「その他役員たるに適しないと認めるとき」に該当するものと判断して、令和2年6月30日付けで原告を被告北大の総長から解任する処分(本件解任処分)を行った。認定された非違行為の内容は、職員に対する日常的なハラスメント18件、対外的な被告北大の信用を失墜する行為2件、大学代表者・研究者としての問題行為3件、総長としての資質を疑われる行為5件であった。原告は、本件解任申出の手続に瑕疵があること、解任事由である「その他役員たるに適しないと認めるとき」に該当しないこと、判断過程審査に裁量権の逸脱・濫用があること、比例原則違反による裁量権の逸脱・濫用があることなどを主張し、被告国に対し本件解任処分の取消しを求めるとともに、被告国及び被告北大に対し国家賠償法1条1項及び民法719条に基づく損害賠償金1466万1832円の支払を求めた。 【争点】 (1) 本件解任申出の手続に瑕疵があり違法であるか(意見陳述の機会の不存在、辞任要求の違法、理事らのオブザーバー出席の違法、会議の秘密性、辞任の申出を審議しなかったこと、定足数を欠いた聴聞手続、調査委員会の調査手続の瑕疵、調査委員会の人選の瑕疵、調査目的の違法) (2) 本件解任処分及び本件解任申出において認定された各非違行為に事実及び評価の誤りがあるか (3) 本件解任申出に裁量権の逸脱・濫用があるか(比例原則違反を含む) 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも棄却した。手続の瑕疵については、総長選考会議は原告に対し調査報告書を添付して解任手続を通知し、陳述書の提出期限も延長され、口頭での意見陳述の機会も与えられていたことから、意見陳述の機会は実質的に保障されていたと判断した。理事らのオブザーバー出席についても、利害関係のある理事らは事実確認が始まった臨時会議以降は出席しておらず、解任申出の決定に実質的に関与したとはいえないとした。調査委員会の手続についても、原告に対する事情聴取を行わなければならないとする明確な規定は存在せず、調査方法は調査委員会の裁量に委ねられているとした。非違行為の事実認定については、職員らの証言が具体的かつ詳細で信用性が高い一方、これに相反する原告の陳述を裏付ける証拠がないとして、文部科学省及び総長選考会議の事実認定・評価は正当であると認めた。裁量権の逸脱・濫用については、認定された28件の非違行為は多岐にわたり、職員を困惑させるとともに大学の信用を失墜させるものであって、原告が「社会の信頼を得ることができ、基幹総合大学としての教育研究活動を適切かつ効果的に運営することができる者」とはいえず、「その他総長たるに適しないと認められるとき」に該当するとした判断は正当であるとした。比例原則違反の主張についても、非違行為の件数及び内容に照らせば、解任処分が比例原則に反するとはいえないとして排斥した。