障害基礎年金の支給停止を解除しない処分の取消等、障害基礎年金支給停止処分取消、障害基礎年金の支給停止を解除しない処分の取消請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 控訴人ら7名(X1〜X4、X6〜X8)及び控訴人X9は、いずれも1型糖尿病に罹患し、障害等級2級に該当する程度の障害の状態にあるとして障害基礎年金の受給を受けていた。しかし、平成28年に控訴人ら7名については支給停止処分がされ、控訴人X9については平成21年にされていた支給停止処分に係る支給停止を解除しない旨の処分がされた。控訴人らは前件訴訟で前件各処分の取消しを求め、大阪地方裁判所は理由提示の要件を欠くとして前件各処分を取り消す判決をし、同判決は確定した。ところが、厚生労働大臣は令和元年に再び控訴人ら7名に対し支給停止処分(本件各支給停止処分)を、控訴人X9に対し支給停止を解除しない旨の処分(本件不解除処分)をした。控訴人らは、本件各処分が前件判決の反復禁止効に反するほか、支給停止事由を欠き違法であるなどと主張して取消しを求めた。原審は、控訴人ら7名には支給停止事由があり、控訴人X9には支給停止解除事由がないと判断して請求をいずれも棄却又は却下したため、控訴人らが控訴した。 【争点】 (1)本件各処分が前件判決の反復禁止効(行訴法33条1項)に抵触するか、(2)本件各処分が権限の濫用であって許されないか、(3)控訴人らについて支給停止事由(控訴人ら7名)又は支給停止解除事由(控訴人X9)があるか、(4)本件各処分が平等原則に違反するか、(5)理由提示義務違反があるか、(6)本件各支給停止処分が授益的行政行為の撤回として許されないか。 【判旨】 原判決取消し、控訴人らの請求認容(逆転勝訴)。裁判所は、争点(1)については原判決を引用して前件判決の反復禁止効への抵触はないとしつつ、争点(3)について、1型糖尿病の特性を踏まえた独自の2級該当性判断基準を詳細に示した。すなわち、1型糖尿病患者は膵β細胞の破壊によりインスリン分泌が完全に欠乏し生涯インスリン療法が必須であること、血糖コントロールに努めても血糖値が大きく変動し重症低血糖や高血糖を繰り返すこと、血糖値の自己対処の負担に加え低血糖発作時の家族の介助の必要性等も含めて日常生活の制限度合いを総合的に評価すべきであるとした。その上で、控訴人ら8名全員について個別に検討し、いずれも内因性インスリン分泌が枯渇し3級指標に該当する障害の状態と比較して重篤であり、血糖コントロールが著しく困難で日常生活が大きく制限されていることから、障害の程度は2級の「日常生活が著しい制限を受ける」程度に当たると認定した。したがって、控訴人ら7名には支給停止事由があるとはいえず、控訴人X9には支給停止解除事由があるから、本件各処分はいずれも違法であると判断し、厚生労働大臣に対し控訴人X9の支給停止を解除する処分を命じた。