殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、20数年来の知人である被害者(当時43歳)から電話の着信拒否をされたことを発端として口論となり、友人らの度重なる制止を振り切って、深夜、自宅から三徳包丁(刃体の長さ約16.3cm)を持ち出し、右手に養生テープで固定した上で、知人に車で送らせて被害者の元へ向かった。令和5年6月3日午前零時46分頃、福岡市内の路上において、包丁を示して脅したところ、後ずさりした被害者が車道と歩道の段差に躓いて転倒した。被告人は、転倒した被害者に対し、包丁を持った手で顔面を複数回殴打した上、左大腿部を2回、右大腿部を1回突き刺すなどの暴行を加えた。被害者は右大腿動・静脈損傷に伴う失血により同日午前2時7分頃に死亡した。被告人は銃刀法違反でも起訴された。 【争点】 殺意の有無が争点となった。弁護人は、被告人が大腿動・静脈の存在を認識しておらず、大腿部を刺しても大量出血するとは思っていなかったこと、被害者との間に元々トラブルがなく口論の発端が些細な出来事であったこと、犯行後に救護活動を行っていることなどから、殺意は認められないと主張した。また、左大腿部の2か所については揉み合いの中で意図せず包丁が刺さった可能性があるとも主張した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、未必的な殺意を認定した。まず刺突行為の態様について、左大腿部の傷はいずれも深さ約12〜13cmあり、揉み合いの中で偶然これほど深く2度も刺さることは考えられず、被告人が意図的に突き刺した結果と認定した。右大腿部についても、傷の形状と被告人の供述する態様が客観的に整合しないとして、被告人が加えた力で約12cmの深さまで刺さったものと認定した。その上で、大腿動・静脈の存在や位置を知らなくとも、鋭利な包丁で大腿部を3回も深く突き刺せば大量出血により死亡させる危険性が高いことは素人目にも明らかであり、被告人もその危険性を認識していたと判断した。友人らの制止を振り切り包丁を準備して赴いた経緯、約3分間という短時間での一方的な攻撃態様、被害者が終始防御的姿勢であったことも踏まえ、強い攻撃意思に基づく犯行であり、死亡の危険性を意に介さず怒りに任せて実行したと認定した。量刑については、殺意が未必的であり刺突部位が大腿部にとどまるものの、防御的な被害者に対し準備した包丁で一方的に激しい攻撃を加えた点は悪質であり、些細な発端から短絡的に犯行に及んだ動機に酌むべき点はないとした。犯行後の救護活動、見舞金100万円の交付、前科がないこと等を考慮しても、求刑懲役16年に対し、懲役14年を言い渡した。