AI概要
【事案の概要】 指定暴力団B会の二次団体であるC組の組長Aが、対立抗争中の指定暴力団F会の副会長(対象者)を殺害しようと企て、C組傘下の組員らに対象者の身辺調査を指示した。ところが、組員らは調査の過程で無関係の一般人Gを対象者と誤認し、その自宅を特定してしまった。犯行の数日前には2日間にわたり、複数の組員が無線等で連絡を取りながらG方まで尾行する練習を行い、けん銃や移動用の自動車、逃走用のバイク等を用意するなど、組織的かつ計画的に準備が進められた。被告人はC組傘下のE興業の組員であり、犯行当日、E興業組長のDから、対象者を銃撃しに行くので逃走の際にバイクを運転するよう指示を受けてこれを了承した。平成22年2月20日午後5時頃、Dが対象者と誤認したG(当時の自宅車庫付近)に対し、自動装てん式けん銃で弾丸7発を発射し、うち3発が右足に命中した。Gは加療約12週間を要する右脛腓骨遠位部開放性粉砕骨折等の重傷を負ったが、一命は取り留めた。被告人は銃撃後、指示どおりDをバイクに乗せて逃走した。本件は事件発生から10年以上を経て再捜査が行われ、起訴に至った。 【争点】 被告人に殺人未遂の共謀共同正犯が成立するか、幇助犯にとどまるかが争点となった。裁判所は、被告人が果たしたバイク運転手役は代替性に乏しく(E興業の配下組員2名のうちバイクを運転できるのは被告人だけであった)、実行犯Dが犯行を遂行する上で重要な役割であったと認定した。被告人の関与は上位者の指示に従う従属的なものであったが、抗争状況を十分に認識し、事前の尾行練習にも参加して計画内容を大まかに把握していたことから、組織と一体となって自分たちの犯罪として行ったと評価するのが相当であり、共謀共同正犯の成立を認めた。 【判旨(量刑)】 裁判所は、本件が反社会的な動機に基づく組織的かつ計画的な銃撃殺人未遂事案であり、標的の誤認により全く無関係の一般人が自宅で銃撃されて重傷を負うという重大な結果が生じたことを重視した。同種事案の量刑傾向の中では中程度(懲役12年)よりやや軽い部類に位置付けられるとしつつ、被告人が捜査途中から自白し、組関係者からの報復の恐怖を乗り越えて上位者の関与も含め具体的に供述して事案解明に大きく貢献したこと、平成27年に自らの意思で組を脱退していること、被害者への謝罪文送付など反省の態度を示していること、本件が確定裁判前の余罪であることを考慮し、懲役7年を言い渡した(求刑懲役9年)。