所得税更正処分等取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告は、フェラーリ社製の車両4台(F50、512TR、360モデナ、612スカリエッティ)を所有し、平成27年及び平成28年にこれらを売却した。また、原告は米ドル建ての外貨普通預金口座を保有し、円貨との間で複数回の振替取引を行っていた。処分行政庁(E税務署長)は、車両の譲渡所得の算定上、各車両が「使用又は期間の経過により減価する資産」に該当するとして取得価額から減価の額を控除して取得費を計算し、また外貨預金の為替差損益を雑所得として総平均法に準ずる方法により譲渡原価を計算した上で、平成27年分及び平成28年分の増額更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行った。原告は、フェラーリF50(349台限定、取得価額約5390万円を1億3500万円で売却)及び512TR(2280台生産)は希少価値により減価しない資産であること、為替差損益は譲渡所得に該当すること等を主張して、処分の取消しを求めた。 【争点】 (1) 平成28年分各通知処分の取消請求に係る訴えの利益の有無 (2) フェラーリF50及び512TRが「使用又は期間の経過により減価する資産」(所得税法38条2項)に該当するか (3) 外貨預金の為替差損益が雑所得と譲渡所得のいずれに該当するか (4) 為替差損益の譲渡原価の計算方法として総平均法に準ずる方法によることの適法性 【判旨】 請求の趣旨第3項に係る訴えを却下し、その余の請求をいずれも棄却した。争点(1)について、増額更正処分が通知処分の内容を実質的に包摂するため、通知処分の取消しを求める訴えの利益はないとした。争点(2)について、裁判所は、資産が「使用又は期間の経過により減価する資産」に該当するか否かは、個別事情や納税者の主観を離れ、その類型ごとに社会通念上想定される本来的な目的・効用から判断すべきであるとの枠組みを示した。自動車の本来の効用は原動機の動力により路上を走ることにあり、経年・使用により機能が類型的に逓減するため、原則として減価する資産に該当する。美術品でない資産が例外的に「時の経過によりその価値の減少しない資産」に該当するのは、骨董品等に類する程度の長期間を経てもなお高い価値を維持している場合に限られるところ、フェラーリF50は製造から18年程度、512TRは24年程度にすぎず、価格高騰もオークション・バブルの影響による不確定なものであるとして、いずれも減価する資産に該当すると判断した。争点(3)について、貨幣は価値尺度・交換手段であり、その自体の価値の増減を観念できないから、為替差損益は譲渡所得ではなく雑所得に該当するとした。争点(4)について、外貨は有価証券に類似し、総平均法に準ずる方法による計算には合理性があるとした。