債権差押命令に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、債権差押え及び転付命令に関する民事執行手続における超過差押えの成否が問題となった事案である。相手方(債権者)は、抗告人(債務者)に対する金員支払を命じる仮執行宣言付き判決を債務名義として、抗告人の第三債務者(ひろせ)に対する売掛債権について差押命令及び転付命令(前件転付命令等)を得た。ところが、ひろせは、前件差押命令の送達を受ける前に、抗告人との間で、転付命令の対象となった売掛債権のうち合計約1463万円の債権(本件被転付債権)について、その支払のために電子記録債権を発生させていた。ひろせは、前件転付命令等の送達後に電子記録債権の支払を抗告人に対して行い、相手方には本件被転付債権の支払をしなかった。その後、相手方が再度の差押命令を申し立てた際、前件転付命令の執行債権から本件被転付債権の額が控除されていなかったため、抗告人が超過差押え(民事執行法146条2項)に当たるとして執行抗告をした。 【争点】 転付命令の対象となった金銭債権について、第三債務者が差押命令送達前に債務者との間でその支払のために電子記録債権を発生させ、転付命令送達後に当該電子記録債権の支払をした場合に、民事執行法160条による転付命令の弁済擬制の効果が妨げられるか否か。 【判旨】 最高裁第三小法廷は、原決定を破棄し、福岡高等裁判所に差し戻した。まず、第三債務者が差押命令送達前に差押えに係る金銭債権の支払のために電子記録債権を発生させた場合、送達後にその電子記録債権が支払われたとしても、差押えに係る金銭債権は消滅し、第三債務者はその消滅を差押債権者に対抗できるとした(最判昭和49年10月24日参照)。しかしながら、転付命令が効力を生じた場合、執行債権及び執行費用は、転付命令に係る金銭債権が存する限り、差押債権者が現実の満足を受けられなくても、その券面額で転付命令が第三債務者に送達された時に弁済されたものとみなされる(民事執行法160条)。転付命令が第三債務者に送達された後に電子記録債権の支払がされた場合には、転付命令に係る金銭債権は弁済擬制の効果が生ずる時点で存在していたのであるから、弁済擬制の効果は妨げられないと判示した。なお、この場合、差押債権者は債務者に対し、電子記録債権の額についての不当利得返還請求等をすることができるとした。裁判官全員一致の意見である。