株式売買価格決定に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、非上場会社である相手方株式会社前田組及び相手方前田ハウジング株式会社が、抗告人らが保有する各社の譲渡制限株式について、会社法144条2項に基づき売買価格の決定を裁判所に申し立てた事案である。 平成28年、抗告人らは各社に対して株式の譲渡承認請求(会社法136条)を行ったが、各社は譲渡を承認せず、自ら株式を買い取る旨を通知した上で、裁判所に売買価格の決定を申し立てた。譲渡制限株式制度の下では、会社が譲渡を承認しない場合、株主の投下資本回収の機会を保障するため、裁判所が公正な売買価格を決定する手続が設けられている。 原審では鑑定が実施され、鑑定人はDCF法(将来期待されるフリー・キャッシュ・フローを一定の割引率で割り引いて株式の現在価値を算定する方法)により、1株当たりの評価額を前田組株式につき7524円、前田ハウジング株式につき6448円と算定した。その上で、非上場会社の株式には市場性がないことを理由とする減価(非流動性ディスカウント)として30%の減価を行い、それぞれ5266円、4514円とするのが相当との鑑定意見を述べた。原審はこの鑑定意見に依拠して売買価格を決定した。 【争点】 DCF法によって算定された譲渡制限株式の評価額から、さらに非流動性ディスカウント(非上場株式に市場性がないことを理由とする減価)を行うことが許されるか。抗告人らは、DCF法による評価額からの非流動性ディスカウントには法令解釈の誤り及び判例違反があると主張した。 【判旨】 最高裁は、抗告を棄却した。会社法144条2項に基づく譲渡制限株式の売買価格決定手続は、譲渡を希望する株主に投下資本の回収手段を保障するために設けられたものであるとした上で、当該株式に市場性がないことを理由に減価を行うことが相当と認められるときは、非流動性ディスカウントを行うことができると判示した。このことはDCF法が評価方法として用いられた場合でも変わらないとした。 もっとも、評価額の算定過程において市場性がないことが既に十分に考慮されている場合には、さらに非流動性ディスカウントを行うことは二重の減価となり相当でないとの留保を付した。本件では、DCF法による算定過程で類似上場会社の株式に係る数値が用いられる一方、株式に市場性がないことが考慮されていることはうかがわれないとして、非流動性ディスカウントを行うことができると結論付けた。裁判官全員一致の意見である。