損害賠償請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 控訴人は、令和4年7月に執行された第26回参議院議員通常選挙に立候補できなかったことについて、国家賠償法1条1項に基づき、被控訴人(国)に対し慰謝料10万円の支払を求めた事案の控訴審である。控訴人は、2つの立法不作為の違憲性を主張した。第1に、参議院議員の被選挙権を有する者を年齢満30年以上と規定する公職選挙法10条1項2号が、憲法14条(法の下の平等)及び憲法15条1項・3項(普通選挙の保障)等に違反するにもかかわらず、国会議員がこれを是正せず放置している立法不作為である。第2に、立候補に際し一定額の供託金の納付を義務づける公職選挙法92条が、憲法15条1項・3項及び憲法44条ただし書(財産による差別の禁止)に違反するにもかかわらず、国会議員がこれを是正せず放置している立法不作為である。原審(第一審)は、いずれの立法不作為も国家賠償法1条1項の適用上違法とは認められないとして、控訴人の請求を棄却した。 【争点】 1. 参議院議員の被選挙権年齢を満30歳以上とする公職選挙法10条の規定が違憲であり、これを是正しない立法不作為が国家賠償法上違法と評価されるか。 2. 選挙供託制度を定める公職選挙法92条の規定が違憲であり、これを是正しない立法不作為が国家賠償法上違法と評価されるか。 【判旨】 控訴棄却。裁判所は、国会議員の立法行為又は立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法となるのは、憲法の一義的な文言に違反する立法を行う場合や、憲法上保障された権利利益を合理的な理由なく制約することが明白であるにもかかわらず正当な理由なく長期にわたり改廃を怠る場合などの例外的な場合に限られるとの判断枠組みを示した。そのうえで、争点1については、憲法が両議院の選挙制度の仕組みについて国会に広範な裁量を認めていることを前提に、被選挙権に選挙権より高い年齢要件を設けたことは立法目的及び手段として合理性があり、参議院の役割に照らして満30歳以上としたことも国会の裁量の限界を超えるものではないとした。また、憲法15条3項の「成年者による普通選挙」の保障は、成年者であること以外に被選挙権について一切の制約を禁止する趣旨とは解されないとした。争点2については、選挙供託制度は候補者の濫立を防止し自由かつ公正な選挙の実現を図る正当な立法目的を有し、供託金の額についても一定の合理性が認められるとして、国会の裁量の限界を超えるものではないと判断した。以上から、いずれの立法不作為も国家賠償法1条1項の適用上違法とは認められないとして、原判決を維持し控訴を棄却した。