受刑者選挙権確認等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 懲役刑の執行を受けている原告が、公職選挙法11条1項2号の規定(以下「本件規定」という。)は、禁錮以上の刑に処せられその執行を終わるまでの者(受刑者)の選挙権等を一律に制限するものであり、国民の選挙権等を保障した憲法の諸規定に違反し無効であるとして、被告(国)に対し、①次回の国政選挙及び最高裁判所裁判官の国民審査において投票をすることができる地位にあることの確認(主位的請求)、②投票をさせないことが違法であることの確認(予備的請求)、③本件規定の改廃等を怠った立法不作為により令和3年の衆議院議員総選挙・国民審査及び令和4年の参議院議員通常選挙で投票できず精神的苦痛を被ったとして、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償金3万円の支払を求めた事案である。 【争点】 1. 本件規定(受刑者の選挙権・国民審査権の一律制限)の憲法適合性 2. 本件規定の改廃等を怠った立法不作為の違法性 【判旨】 裁判所は、予備的確認請求に係る訴えを却下し、その余の請求をいずれも棄却した。 争点1について、裁判所はまず、選挙権が国民固有の権利として保障される一方、選挙人団の一員として公の職務を執行するという公務的側面も有することを指摘し、選挙人の資格を定める立法の憲法適合性は、立法目的が合理的であり、その手段が必要かつ合理的であるか否かによって判断すべきであるとした。原告が主張する平成17年最判の厳格な基準(やむを得ない事由の有無)については、同判決は在外国民の選挙権の「行使」の制限が問題となった事案であり、選挙人の「資格」を定める立法の合憲性が問題となる本件とは事案を異にするとして退けた。 その上で、本件規定の立法目的については、受刑者は自ら法秩序を著しく害した者であり、適格な選挙人団を構成する観点からその選挙権を制限し、選挙の公明・適正を確保する目的は合理的であるとした。手段の合理性については、禁錮以上の刑の執行は社会からの隔離を内容として含み、受刑者の社会参加が一定程度制限されることは憲法も予定していること、実刑判決を受ける者は類型的に法秩序を害した程度が大きいと合理的に判断できること、制限期間も刑の執行終了までに限定されていることなどを挙げ、必要かつ合理的な手段であると判断した。諸外国の状況や国民投票権との整合性に関する原告の主張もいずれも退けた。国民審査権の制限についても同様の理由で合憲とした。 争点2について、本件規定が憲法に違反しない以上、国会が本件規定の改廃等をしなかったことが違法な立法不作為に当たるとはいえないとして、国家賠償請求も棄却した。