道路交通法違反
判決データ
AI概要
【事案の概要】 平成27年3月、被告人は長野県佐久市内の交差点において普通乗用自動車を運転中、横断歩道上を歩行していた被害者(当時15歳)に自車を衝突させ、多発外傷等の傷害を負わせる交通事故を起こした。被告人は衝突地点から約95.5m先で車両を停止し、衝突現場付近に戻って被害者を捜索したが発見できなかった。その後、車両に戻りハザードランプを点灯させた後、飲酒運転の発覚を避けるため近くのコンビニで口臭防止用品「ブレスケア」を購入・服用し(所要約1分)、再び衝突現場方向に向かった。被害者が発見されると駆け寄り人工呼吸を行い、友人が119番通報した。事故から約7年後の令和4年1月に救護義務違反及び報告義務違反で起訴され、原審(一審)は懲役6月の実刑に処した。 【争点】 救護義務違反の罪(道路交通法72条1項前段)の成否。具体的には、被告人が事故後にブレスケアを購入するためコンビニに立ち寄った行為をもって、「直ちに」救護措置を講じなかったと評価できるか。 【判旨】 東京高裁は原判決を破棄し、被告人に無罪を言い渡した。裁判所は、被告人の事故後の行動を全体的に考察し、(1)事故直後に車両を停止して被害者の捜索を開始したこと、(2)ハザードランプの点灯は危険防止義務の履行と評価できること、(3)コンビニでの行動は救護目的ではないものの所要時間は約1分、移動距離も約50mにとどまること、(4)その後直ちに衝突現場方向に向かい被害者発見後は人工呼吸等の救護措置を講じたことを指摘し、被告人の救護義務を履行する意思は一貫して保持されていたと認定した。飲酒発覚回避の意思は道義的に非難されるべきものであるとしても、救護義務を履行する意思と両立するものであり背反するものではないと判示した。原判決が飲酒事実の発覚回避という行為の目的を過度に重視し、事故後の被告人の行動全体を十分に考察しなかった結果、構成要件への当てはめを誤ったと結論づけた。なお、報告義務違反については公訴時効(3年)が完成しており、救護義務違反と科刑上一罪の関係にあるため救護義務違反の無罪に伴い免訴すべきとしたが、科刑上一罪の一部として起訴されたものであるため主文では免訴の言渡しはしないとした。