AI概要
【事案の概要】 税理士事務所を経営する被告人が、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い中小企業庁が所管する持続化給付金制度を悪用した詐欺の事案である。持続化給付金は、コロナ禍で売上が減少した事業者を迅速に支援するため、前年同月比で売上が50%以上減少した事業者に対し最大100万円(個人事業者)を給付する制度であった。被告人は、大量の申請が予想される中で審査が甘く不正が発覚しにくいと考え、自らの親族、税理士事務所の従業員及びその親族、顧問先関係者ら計45名を申請名義人として利用した。第1の犯行として、実際には売上が減少していない5名分の虚偽申請を行い計500万円を詐取し、第2の犯行として、個人事業者ではない40名分について虚偽の確定申告書や売上台帳を作成・添付して申請を行い計4000万円を詐取した。被告人は不正申請のスキームを考案し、虚偽書類の作成を含む申請手続を事務所で代行するなど、税理士としての専門知識を悪用し、事務所ぐるみで組織的に敢行したものである。被害総額は合計4500万円に上る。 【量刑の理由】 被告人に対し懲役3年・執行猶予5年が言い渡された(求刑懲役6年)。犯行は45回にわたる詐欺であり、4500万円という被害額はこの種事案の中でも非常に高額で、厳しい非難を免れない。一方、被害金額のうち4100万円は既に各受給者から返金され、残り400万円についても返金準備が整い被害回復の具体的見込みがあった。被告人自身の利得額は顧問先関係者分の代行手数料314万円にとどまり、これも速やかに返金済みであった。また、43件について自首の成立が認められた。被告人は共犯者からの連絡を受けて弁護人と共に警察に出頭し、不正請求リスト及び関係資料を自ら捜査機関に提出して捜査に積極的に協力しており、本件捜査を相当容易にしたと評価された。さらに、公判でも罪を認めて反省を示し、220万円の贖罪寄付を行ったこと、税理士登録の抹消や事務所閉鎖という社会的制裁を既に受けていること等も考慮され、実刑ではなく全部執行猶予が付された。