収賄,有印私文書偽造・同行使,詐欺,詐欺未遂,贈賄
判決データ
AI概要
【事案の概要】 市民病院の呼吸器科医師である被告人Aが、ED治療薬を入手するため、他の医師の記名押印がある処方箋用紙を無断で使用し、自己を患者とする処方箋計6通を偽造して薬局に提出行使し、5回にわたりED治療薬をだまし取り(合計約4万6000円相当)、1回は薬局従業員に偽造を見破られ未遂に終わった有印私文書偽造・同行使・詐欺の事案である。加えて、被告人Aが市民病院の主任医長兼呼吸器センター長として、粘着クリーナーの花粉症症状改善効果を検証する臨床研究を受け入れた際、研究所代表理事である被告人Bから20万円を受領したことが収賄罪に、Bによる同交付が贈賄罪にそれぞれ問われた。 【争点】 本件20万円の交付が賄賂の供与に該当するかが最大の争点となった。検察官は、Aが臨床研究を病院で受け入れ、倫理委員会への申請や共同研究契約の締結を円滑に進めるよう便宜を図ったことへの謝礼であると主張した。これに対し被告人両名は、20万円はAが医学専門家として臨床研究のデザインや試験条件等についてアドバイスしたことに対する正当な対価(アドバイザリー契約に基づく報酬)であり、賄賂には当たらないと主張した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、処方箋偽造・詐欺については、被告人Aが医師の立場にありながら処方箋に対する社会一般の信頼を損なう犯行を繰り返した点を指摘しつつ、被害総額が高額とはいえず代金も支払っていることや、前科前歴がなく反省していることを考慮し、懲役1年・執行猶予3年とした(求刑懲役2年・追徴20万円)。 収賄・贈賄の公訴事実については、被告人両名を無罪とした。裁判所は、20万円はAの医学専門家としてのアドバイス等に対して支払われたとするB・Aの供述が客観的証拠と整合しその信用性を否定し難いと判断した。具体的には、企業側が当初から医学専門家への報酬として20万円を計上していた経緯、Aが症例数・群分け方法・評価項目等について専門的提言を行っていた経緯、臨床研究が病院で実施されることになった後も金額が増額されなかった事実などを重視した。さらに、仮にAのアドバイス等に公務としての性質が含まれるとしても、事業者が研究を職務とする公務員に指導・助言等の対価として金品を交付する場合、研究者個人の知識・経験等への敬意・評価としての謝礼の趣旨が含まれるのが一般的であり、20万円という金額は社会通念上許容し得る範囲を超えないとして、賄賂罪の成立を否定した。