AI概要
【事案の概要】 平成30年9月6日に発生した北海道胆振東部地震により、北海道内で電気事業等を行っていた脱退前被告が運転する苫東厚真火力発電所の発電機が停止したことなどをきっかけに、北海道全域における大規模停電(ブラックアウト)が発生した。北海道斜里郡でホテルを経営する反訴原告が、脱退前被告から損害賠償債務を承継した反訴被告に対し、不法行為に基づき、宿泊予約の解約による損害等合計4357万円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。反訴原告は、脱退前被告には、①本件発電所に発電量の48%超を集中させていたのに発電量の分散を怠った過失、②本件発電所の合計出力以上の負荷遮断量を設定すべきであったのにこれを怠った過失、③地震によるブラックアウト発生時の復旧計画を立案せず、復旧に1週間を要するとの誤った見通しを公表した過失があると主張した。 【争点】 (1) 本件発電所に発電量を一極集中させた過失の有無 (2) 適切な負荷遮断量の設定を怠った過失の有無 (3) ブラックアウトからの復旧に係る過失の有無 【判旨】 請求棄却。裁判所は、電力会社はブラックアウトを極力防ぐよう設備を形成・運用する責務を負うとしつつも、電力系統の安定運用と経済的合理性とのバランスを図る必要があるとし、信頼度基準の考え方を参酌して判断した。争点(1)について、発電機3機の同時脱落(N-3)のみではブラックアウトは発生せず、送電線4回線の同時地絡事故(N-4)が競合するN-7という超稀頻度リスクの現実化であったこと、メリットオーダーによる発電集中は国の政策的要請に基づくものであり電気料金の低廉化に資することから、発電量を90万kW以下に抑える義務はなかったとした。京極水力発電所の稼働義務についても、深夜帯に調整池に十分な水が貯留されていない可能性があるなど対策として確実性に乏しいとして否定した。争点(2)について、北本連系設備からの60万kWの緊急受電と負荷遮断146万kWを組み合わせれば、発電機3機の同時脱落に加えてさらに50万kW程度の供給力喪失にも対応可能であったとして、負荷遮断量の設定に過失はないとした。争点(3)について、脱退前被告は事前にブラックスタートの手順書を策定しており、復旧に1週間との当初予測も、国による節電要請や他社からの電力供給といった事前に予測困難な要因により早期復旧が実現したものであるから、不合理とはいえないとした。