AI概要
【事案の概要】 テーマパークの出演者(ダンサー等)として有期雇用契約を締結し勤務していた原告が、業務中に来園客から右手の指を折り曲げられる暴行を受けた(平成25年2月)ことを契機に、上司(スーパーバイザー)らからパワーハラスメントを受け、また同僚出演者からいじめを継続的に受けたと主張した。原告は、被告会社が労働契約上の安全配慮義務(職場環境調整義務)に違反してパワハラ・いじめを放置したとして、債務不履行又は使用者責任に基づき330万円の損害賠償を求めた。原告は暴行事件後にうつ症状・過呼吸を発症し、産業医や主治医から休職・療養を勧められたが、雇用契約が1年更新でオーディション合格が条件であったため契約維持への不安から就労を継続した。原告は過呼吸の事情をできる限り人に知られないようにしていたが、配役について希望を述べることが多くなり、事情を知らない他の出演者から不満を持たれて職場で孤立していった。 【争点】 (1) 上司らのパワハラ及び同僚のいじめについて被告に安全配慮義務違反があったか。具体的には、SVの「心が弱い」旨の発言、配役変更拒否時の「わがまま」「解雇対象になる」との発言、UMの懇親会での暴言、同僚出演者による侮辱的発言等がパワハラ・いじめに該当するか。(2) 被告の使用者責任の有無。(3) 原告の損害額。 【判旨】 裁判所は、原告が主張する個々のパワハラ発言・いじめ行為の多くについて、これを認めるに足りる的確な証拠がないとし、一部認められる発言(上司SVが原告の心の弱さを指摘するものともとれる発言、UMの懇親会での発言、同僚の冗談めかした発言等)についても、社会通念上相当性を欠き違法となるとまではいえないと判断した。 しかし、被告の職場環境調整義務違反については、次の事情を総合的に考慮して認めた。すなわち、(1)出演者間の人間関係は1年更新の契約や配役をめぐり軋轢を生じやすい性質があること、(2)原告は暴行事件後にうつ症状・過呼吸を発症したが契約維持を慮り事情を秘匿していたこと、(3)原告が配役について希望を述べることで他の出演者から不満を持たれ孤立したこと、(4)遅くとも平成25年11月末の部長・MGRとの面談により被告は原告の状況を認識していたこと。これらの事情のもと、被告は他の出演者に事情を説明するなどして職場の人間関係を調整し、原告が孤立することがないようにすべき義務を負っていたにもかかわらず、これを放置したと認定した。 他方、仕事内容の調整義務違反については、産業医らが休職を勧めたのに原告が就労継続を望んだこと、被告がゲストと接触しないよう配慮した配役をしたこと等から、違反があったとまではいえないとした。 以上から、職場環境調整義務違反による精神的苦痛に対する慰謝料80万円及び弁護士費用8万円の合計88万円を認容し、その余の請求を棄却した(請求額330万円に対する認容率約27%)。