AI概要
【事案の概要】 被告人は、三男である被害者(当時5歳)を含む3人の子供を一人で養育していた母親である。共犯者であるママ友Xは、被告人に対し、架空の裁判や暴力団組織の存在等の虚言を重ねて金銭を搾取し、被告人の生活全般を実質的に支配していた。被告人はXの嘘を信じ、夫と離婚し、母や姉との関係も断絶させられ、収入の全額をXに渡すようになった結果、食事を含む生活全般をXに依存する状況に陥った。令和元年8月頃から子供らの食事の量と回数が減らされ、同年10月頃以降、被害者が留守番中に外出したり食べ物を食べたりした「罰」と称して、多数回にわたり連続数日間食事を一切与えないなどの虐待が行われた。被告人はこれが虐待であると認識しながらも、Xの指示に従い続け、被害者に十分な食事を与えず、令和2年4月18日、被害者を飢餓死させた。被害者の死亡時体重は10.2キログラムで、同年齢児童の平均体重の半分程度であった。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被害者に長期間飢えの苦しみを与えた犯行態様は余りにもむごく、かけがえのない命が失われた結果は重大であり、犯行の客観面は相当悪質な部類に属すると認定した。一方で、被告人はXの嘘に騙されて経済的に搾取され、心理的にも支配されていたという被害者としての側面があり、これが犯行の主な要因であったことから、被告人の意思決定を強く非難することはできないとした。検察官の「被告人は被害者の命よりXとの関係維持等を優先させた」との主張に対しては、当時の被告人の置かれた状況に照らし、Xの指示に従わざるを得ないと判断した心情は相応に理解できるとして退けた。しかし、子供に十分な食事を与えることは同居親として絶対に果たすべき責任であり、被告人は被害者の異常な痩身や体調不良を認識し、Xへの不満を記すなど自ら判断する能力も残されていたことから、親族に助けを求めるなどして被害者を保護する行動を取ることが期待可能であり、一定の非難を免れないとした。以上から、保護責任者遺棄致死事件の中で極めて重い部類とはいえないが執行猶予を付するほど軽くもないとして、求刑懲役10年に対し、懲役5年(未決勾留日数300日算入)を言い渡した。