住居侵入、殺人被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人が、令和元年6月13日頃から14日頃にかけて、金品窃取の目的で鹿児島県奄美市の被害者(当時87歳)方に玄関引き戸から侵入し、殺意をもって右鎖骨上部等を刃物様のもので複数回突き刺し、出血性ショックにより死亡させたとして、住居侵入・殺人の罪で起訴された事案である。 【争点】 本件の争点は、被告人が本件犯人であると認められるか否かである。検察官は、①被害者方玄関引き戸から被告人の指紋が検出されたこと(揺すり外しによる解錠と整合)、②被害者の遺体下のタオルケットから被告人の毛髪が発見されたこと(DNA型の出現頻度が約271.5兆人に1人)、③被害者の肌着から被告人のDNAを含む付着物が検出されたこと(尤度比約5612億倍)、④台所の冷蔵庫から被告人の指紋が検出されたこと、⑤被告人が報道発表前に「奄美 事件」等とインターネット検索していたこと、⑥被告人が経済的に困窮していたことを根拠に、被告人が犯人であると主張した。これに対し弁護人は、DNA鑑定の信用性を争うとともに、捜査過程でのDNA混入の可能性や、本件犯行とは別の機会に被告人が痕跡を残した可能性を主張した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人に無罪を言い渡した(求刑懲役20年)。まず、指紋鑑定及びDNA型鑑定の信用性は認めたが、指紋の付着時期を特定することは困難であるとした。次に、経済的に困窮していた被告人が、本件犯行より前に金品目的で被害者方に侵入しようとした際や実際に侵入して物色した際に、玄関引き戸に触れ、居間兼寝室で毛髪やDNAを残し、台所の冷蔵庫に触れた可能性を否定できないと判断した。肌着の付着物についても、被告人が直接肌着に触れたことを示すものとは認められず、物色時に家具等に付着させた組織片が肌着に移転した可能性があるとした。検索履歴や経済状況も被告人が犯人でなくても説明がつく事情であるとし、間接事実の中に被告人が犯人でないとすれば合理的に説明できない事実関係は含まれていないと結論づけた。