AI概要
【事案の概要】 日本郵便株式会社の保険販売員(渉外社員)であった原告が、かんぽ生命保険の保険募集業務において、高齢の顧客に対し既契約17件を解約させた上で新規契約19件を締結させる乗換契約を行ったことを理由に、令和2年9月30日付けで懲戒解雇処分を受けた事案である。原告は、懲戒解雇は無効であるとして、労働契約上の地位確認、未払賃金及び賞与の支払いを求めて提訴した。 【争点】 ①懲戒解雇事由の有無(顧客の意向把握義務違反・不利益事実の不告知の有無)、②懲戒解雇の相当性、③手続上の違法性(弁明機会の不付与等)、④原告の給与額(営業手当・賞与の算定基礎)。 【判旨】 裁判所は、懲戒解雇事由の存在を否定し、本件懲戒解雇を無効と判断した。主な理由は以下のとおりである。 第一に、原告は被告所定の「ご意向確認書」及び「ご契約に関する注意事項」を用いて顧客の意向確認と乗換契約に伴う不利益の説明を行っており、顧客自身がご意向確認書に意向に沿っている旨を記入し、不利益説明を受けた旨のチェックを入れていた。これらの書類は被告の内務責任者・局長等責任者・かんぽ生命による審査を経ており、問題は指摘されていなかった。したがって、原告は当時被告が求めていた水準の意向確認及び不利益説明を履践していたというべきである。 第二に、被告が顧客の意向に反していた根拠として挙げた多数契約調査用紙(「社員を信頼しているので言われるがままに契約していた」等の記載)については、被告担当者が苦情もなく訪問し、調査を拒む顧客に対し損失が出ている可能性があると粘り強く説得してヒアリングに至った経緯や、解約損について不正確な説明を行った問題点を指摘し、誘導の可能性を否定できないとして証拠価値を低く評価した。 第三に、顧客が高齢で多数の契約を締結していた点は原告の担当以前からの状況であり、新規契約が後に解約された点も顧客の収入状況の変化の可能性があるとして、いずれも意向に沿わなかったことの根拠とならないとした。原告作成の始末書についても、具体的な相違点を述べておらず、穏便に済ませるために作成したとの原告の説明も不合理とはいえないとした。 給与額については、営業手当月額15万1405円を含む月額50万2575円の賃金請求権を認め、賞与のうち年末手当はE評価を前提に61万1827円と算定した。