LINEを用いたオンラインによる住民票の写し交付請求サービス適法確認請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告(IT企業)は、LINEを用いてオンラインで住民票の写しの交付請求ができるサービス(本件サービス)を開発し、渋谷区等の市町村に提供していた。本件サービスでは、電子署名・電子証明書ではなく、LINEのeKYC(顔認証AI+本人確認書類撮影)により本人確認を行っていた。これに対し、総務省住民制度課長は、電子署名によらないオンライン住民票交付請求は住民基本台帳法等に違反する旨の通知(本件通知)を発出した。さらに、省令改正により、住民票の写しの交付請求にはデジタル手続法総務省令4条2項ただし書の適用がない旨が明記され(本件省令22条)、電子署名・電子証明書以外の方法によるオンライン請求は法令違反となった。原告は、①本件通知が違法であることの確認、②本件サービスを適法に提供できる地位にあることの確認を求めて出訴した。 【争点】 (1) 本件通知違法確認請求の確認の利益の有無 (2) 本件地位確認請求の確認の利益の有無 (3) 本件省令22条がデジタル手続法6条1項の委任の範囲を超えるか 【判旨】 裁判所は、本件通知違法確認請求については確認の利益を否定し却下した。本件通知は技術的助言にすぎず、地方公共団体がこれに従わなかったことを理由に不利益な取扱いをすることは禁止されており、実際に渋谷区は通知後も本件サービスを継続していたことから、原告の権利・地位に実質的影響を及ぼすものとはいえないとした。 他方、本件地位確認請求については確認の利益を認めた。省令改正により本件サービスは明示的に法令違反となり、渋谷区も停止を余儀なくされたことから、原告の具体的な権利・地位に実質的影響が生じていると判断した。 本案の判断として、裁判所は本件省令22条は授権規定の委任の範囲内であるとした。デジタル手続法6条1項は主務大臣に専門技術的な裁量を広く認めており、オンライン手続にはなりすまし等の特有のリスクがあること、LINE eKYCは偽造書類が通過する可能性がある等電子署名方式に比し本人確認の強度が劣ること、不正手法が確立されれば短期間に大量の不正申請がなされ住民基本台帳制度の信頼が揺らぐ危険があること等を指摘し、厳格な本人確認を貫徹する省令改正は住基法・デジタル手続法と整合するとした。原告が郵送請求では本人確認書類の写しで足りると主張した点も、郵送特有の事情によるやむを得ない措置にすぎないとして退け、請求を棄却した。