AI概要
【事案の概要】 本件は、被告(大手電機メーカー)の発行する株式を取引所市場で取得した原告ら(信託銀行2社)が、被告が提出した有価証券報告書及び四半期報告書に不適切な会計処理に起因する重要な事項についての虚偽記載があったことにより損害を被ったと主張して、被告に対し、主位的に不法行為(民法709条)に基づく損害賠償を、予備的に金融商品取引法21条の2第1項に基づく損害賠償を求めた事案である。 被告は、第171期から第175期までの有価証券報告書等において、インフラ関連の工事進行基準適用案件における工事原価総額の過少見積りによる売上の過大計上、PC事業や映像事業における部品取引を利用した当期利益の嵩上げ、半導体事業における滞留在庫の評価損不計上などの不適切な会計処理を組織的に行っていた。第三者委員会の調査により、累計約1518億円の要修正額が報告され、被告は過年度決算の訂正を行った。金融庁からは課徴金約73億7350万円の納付命令も発せられている。 【争点】 (1) 虚偽記載の有無及び範囲、(2) 虚偽記載が重要な事項についてのものか、(3) 不法行為の成否(法人の直接不法行為責任)、(4) 損害の算定方法(高値分及びろうばい売り等の損害の認定、市場要因の控除、取得時期に応じた調整)、(5) 金商法21条の2第2項による推定損害額の算定、(6) 「虚偽記載等の事実の公表」の時期 【判旨】 裁判所は、第三者委員会の調査報告書の信用性を認め、本件有価証券報告書等に虚偽記載があったと認定した。重要性については、継続事業税引前当期純損益は第171期・第173期・第174期について、当期純損益及び株主資本は第171期から第175期までの全期について、投資判断に重大な影響を与える重要な虚偽記載に当たると判断した。売上高については訂正比率がいずれも1%未満であり、重要な虚偽記載とは認めなかった。 不法行為の成否については、経営トップらが意図的な利益の嵩上げを認識しながら是正しなかったことは、法人の一個の組織体としての行動であり、代表者や被用者個人の故意・過失を個別に問題とすることなく、法人として民法709条に基づく損害賠償責任を負うと判断した。 損害額の算定では、虚偽記載発覚前後の株価下落期間を平成27年4月3日から同年9月7日とし、下落額159.7円を基礎としつつ、同業他社の株価推移との比較から市場要因による下落分として30%を控除した。さらに、被告株式の取得時期に応じて縦覧期間ごとに影響割合を調整し(縦覧期間A・Bは30%、Cは60%、D・Eは100%)、民訴法248条により相当な損害額を認定した。算定対象株式の特定方法としては、振替株式の没個性的性格に適合するものとして総平均法を採用した。 金商法21条の2第2項の「虚偽記載等の事実の公表」の時期は平成27年5月8日開示と認定し、推定損害額を算定した上で、同条4項の減額の抗弁は認めなかった。 結論として、原告カストディに対し主位的請求で約1億3117万円、予備的請求②で差額約973万円を、原告マスタートラストに対し主位的請求で約86万円、予備的請求②で差額約2067万円をそれぞれ認容した。