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【事案の概要】 消費生活協同組合法に基づいて設立された生活協同組合(生協)である原告が、被告(国)の実施する「キャッシュレス・消費者還元事業」に関し、加盟店登録の申請を行ったところ、被告が当初は課税所得要件を満たす生協等を全て加盟店登録の対象とする方針を示していたにもかかわらず、事業開始直前に方針を撤回し、原告の事業規模が実質的に大企業と同視できるとして加盟店登録を認めなかったことが国家賠償法上違法であるとして、準備費用相当額の損害賠償を求めた事案である。原告は兵庫県内で141店舗を展開し、売上高約2440億円、従業員数2109人と県内小売業で最大規模であったが、課税所得は年平均約10億円で加盟店登録要領の課税所得要件(15億円未満)は満たしていた。原告は本件事業への参加に向け、自社電子マネー「コピカ」のカード70万枚の増刷、チラシ340万枚の作成、レジシステムの改修等の準備を進めていた。 【争点】 主な争点は、(1)被告が原告の加盟店登録を認めなかったことが国家賠償法上違法か、(2)原告の損害額である。被告は、本件事業の実施主体は一般社団法人キャッシュレス推進協議会であり被告ではないこと、加盟店登録要領の登録除外規定⑬(事業の目的・趣旨から適切でないと判断する者)により事業規模を考慮して登録を拒否することは当初から予定されていたこと等を主張した。原告は、加盟店登録要領及びマニュアルの記載上、生協等は課税所得要件のみで判定されることが明確に示されており、事業規模を理由とした登録拒否は方針変更に当たると主張した。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を一部認容し、1186万5852円の損害賠償を命じた。まず判断枠組みとして、最高裁昭和56年判決の信頼保護法理を参考にしつつ、本件は同判決とは事案が異なるため、被告の動機づけ行為による信頼形成の有無、相当の費用負担を伴う準備の有無、方針変更の違法性を検討するとした。加盟店登録要領等の記載は、一般人の普通の注意と読み方を基準とすれば、生協等は課税所得要件のみで加盟店登録の対象となると理解されるものであり、事業規模を理由に対象外となる可能性を読み取ることはできないと認定した。また、原告が決済事業者としても登録を受けていたことが信頼を高度なものにしたと評価した。被告が当初から事業規模による除外を予定していたとの主張については、そうであれば要領にその旨を記載できたはずであり、不明確な状態を積極的に創出していたとは考えられないとして排斥した。損害額については、コピカ増刷費用は70万枚のうち補助金交付申請時の想定増加数に相当する21万枚分の850万2732円のみを相当と認め、チラシ作成費用179万7120円及びレジ改修費用156万6000円は全額を認容した。