AI概要
【事案の概要】 原告(国)が、C株式会社に対して約33億7000万円の租税債権を有すると主張し、C社が被告A銀行及び被告B銀行との間で不動産に根抵当権設定契約(極度額A銀行30億円、B銀行20億円)を締結した行為が詐害行為に該当するとして、国税通則法42条及び改正前民法424条に基づき、各根抵当権設定契約の取消し及び根抵当権設定登記等の抹消登記手続を求めた事案である。C社は金製品の免税販売事業を営んでいたが、税務調査の結果、免税対象とならないとして約105億円の課税処分を受け、還付金約71億円が充当された後も約33億7000万円の滞納税額が残った。被告らは、C社とのコミットメントライン契約(総額50億円)に基づく融資の債権保全のため、課税処分通知の交付と同日である平成29年6月30日に根抵当権設定契約を締結し、オンライン登記申請の最終受付時刻直前に登記を完了した。 【争点】 1. 被保全債権(租税債権)の存否:被告らは、C社が別件税務訴訟で課税処分の取消しを求めて係争中であり、租税債権の存在は立証されていないと主張した。 2. 根抵当権設定契約の詐害行為該当性:(a)判断基準として通謀詐害意図が必要か、(b)判断の基準時はコミットメントライン契約締結時(平成29年3月31日)か根抵当権設定契約締結時(同年6月30日)か、(c)C社が無資力であったか、(d)同時交換的行為・弁済期の担保提供として詐害性が否定されるか。 3. 被告らの詐害行為該当性に関する認識の有無。 【判旨】 原告の請求をいずれも認容した。 1. 被保全債権の存否について、課税処分は重大かつ明白な違法がない限り公定力により完全な効力を有するところ、被告らは課税処分の重大かつ明白な違法を何ら主張しておらず、租税債権の存在が認められるとした。 2. 詐害行為該当性について、まず判断基準として、改正後民法424条の3の施行前の行為であり、経過規定により従前の例によるとされていることから、通謀詐害意図までは不要であるとした。基準時については、本件担保供与条項は平成29年8月末日付けでの設定を予定しており、約定日に先立つ設定は規定されていないこと等から、同年6月30日を基準とすべきとした。C社の資産状況について、不動産評価額として原告鑑定評価書(53億1000万円)を採用し、同日時点で少なくとも約25億6000万円の債務超過であったと認定した。さらに、被告らが課税処分通知の当日に慌てて登記申請の最終受付時刻直前に駆け込み登記を完了した経緯から、租税債権に優先して債権回収を図ることが主たる目的であったと認定し、同時交換的行為や弁済期の担保提供との主張も排斥して、詐害行為該当性を肯定した。 3. 被告らの認識について、A銀行はC社の実質自己資本をマイナス66億4700万円と算定し信用格付けを破綻懸念先に変更していたこと、B銀行もC社の予想純資産額をマイナス75億4700万円と試算し同様に破綻懸念先に格付変更していたことから、被告らはC社が無資力であることを認識していたと認定した。