AI概要
【事案の概要】 札幌弁護士会所属の弁護士である原告ら3名が、被告ら(選定当事者を含む計960名)に対し、被告らが札幌弁護士会に対して行った弁護士法58条1項に基づく懲戒請求が違法な不法行為に当たるとして、損害賠償を求めた事案である。被告らは、「余命三年時事日記」と題するブログの呼びかけに応じ、同ブログ運営者が提供した統一書式の懲戒請求書に署名押印して一括提出した。懲戒事由として、(1)日弁連会長が発出した「朝鮮学校に対する補助金停止に反対する会長声明」に原告らが賛同・容認し活動を推進したこと、(2)対レイシスト行動集団(C.R.A.C.)の代理人としてツイッタージャパン社にアカウントロック解除を求める内容証明郵便を送付したことがテロ等準備罪に抵触する可能性があることなどが挙げられていた。原告らは、主位的に共同不法行為として連帯して各550万円、予備的に個別の不法行為として各55万円の損害賠償を請求した。 【争点】 主な争点は、(1)本件懲戒請求が違法な不法行為を構成するか、(2)共同不法行為が成立するか、(3)損害額の3点である。被告らは、最高裁平成23年判決により平成19年判決の基準が実質的に変更されており受忍限度の範囲内であること、懲戒事由には法律上の根拠があること、弁護士会が懲戒請求として扱わない選択もできたことなどを主張して争った。 【判旨】 裁判所は、まず平成19年最判の基準(懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠く場合に、請求者がそのことを知り又は知り得たのにあえて請求するなど相当性を欠くときは不法行為を構成する)を適用し、被告らが援用する平成23年最判は懲戒請求の呼びかけ行為に関するものであり平成19年最判と矛盾しないとして、被告らの主張を退けた。懲戒事由(1)については、会長声明の内容に照らし賛同等が品位を失うべき行為に当たる余地はないとし、懲戒事由(2)についても、アカウントロック解除の請求は通常の弁護士業務であり、テロ等準備罪に該当しないことも一見明らかであるとして、いずれも事実上又は法律上の根拠を欠くことが明らかであると判断した。さらに、被告らが事前に何ら調査を行っていないことから、根拠がないことを知り得たと認定し、不法行為の成立を認めた。共同不法行為については、同一書式を用い一括して提出された懲戒請求は客観的に1個の不法行為と評価でき、客観的関連共同性が認められるとした。損害については、960名からの大量懲戒請求による不安感や弁明書作成の負担を認めつつも、実際に懲戒を受けるおそれを感じていたとは考えにくいこと等を考慮し、慰謝料各30万円、弁護士費用各3万円の合計各33万円を認容した。