AI概要
【事案の概要】 暴力団組長であった被告人が関与したとされる、傷害1件と窃盗2件の刑事事件である。 第1事実は、被告人が他の組長・組員6名と共謀の上、平成24年8月10日未明、北九州市内の駐車場において、共犯者Cが、暴力団立入禁止標章を掲示した飲食店を統括していた被害者Gに対し、アイスピック様の凶器でその左大腿部を1回突き刺し、加療約7日間を要する刺創を負わせたという傷害の事案である。 第2事実は、被告人が共犯者Hと共謀し、平成25年12月6日に福岡県遠賀郡内で軽四輪乗用自動車1台(時価約50万円相当)を、平成26年4月25日にも同郡内で軽四輪乗用自動車1台(時価約30万円相当)を、それぞれ窃取したという窃盗2件の事案である。被告人は第1事実については公訴事実を認めたが、第2事実については関与を否認した。 【争点】 第2の各窃盗について、被告人が共犯者Hに犯行を指示したか(故意・共謀の有無)が争点となった。弁護人は、実行犯であるHの供述が信用できず、被告人は本件窃盗に関与していないと主張した。 【判旨(量刑)】 裁判所はまず争点について、Hが被告人を暴力団Kの幹部と認識していた状況下で虚偽供述をすれば報復等の後難を招くばかりであり、Hには被告人の関与について虚偽供述をする動機がないこと、H自身も有罪判決を受けて自己の責任回避の姿勢が見られないこと、供述内容が客観的証拠と齟齬せず不自然不合理な点もないことから、H供述の信用性を肯定し、これを否定する被告人供述を排斥した上で、被告人がHに指示して実行させた故意・共謀を認定した。 量刑判断においては、第1事実につき、立入禁止標章の掲示をやめさせKへの恐怖心をあおる反社会的動機、下見から証拠品処分まで役割分担がなされた顕著な組織性・計画性、刺創の重さと被害者が引越しを余儀なくされた精神的苦痛の大きさ、一般市民を標的とした犯行である点を重視し、被告人を主犯と評価した。第2事実についても動機に酌むべき事情がなく、被害弁償もないと指摘した。さらに、被告人が暴力団関係事件で長期服役歴がありながら本件に及んだ点も看過しがたいとした。他方、第1事実につき82万円で示談が成立し被害者の処罰感情が和らいだこと、暴力団との関係を絶つ旨の供述など酌量事由を考慮しても主文の刑はやむを得ないとし、求刑懲役9年に対し、懲役7年(未決勾留日数中220日算入)を言い渡した。