AI概要
【事案の概要】 被告人は、かつて介護事業を営んでおり、顧問社会保険労務士であった被害者(当時44歳)との間で同事業を巡るトラブルが生じたことから、被害者に恨みを募らせ、報復を計画した。被告人は、インターネットサイトを通じて借金返済に窮していた共犯者Aを誘い込み、犯行現場となるアパートの賃借、自動車の購入、睡眠導入剤の入手など相当大掛かりな準備を行った。 平成30年8月16日午前5時8分頃、被告人はAと共謀の上、愛知県あま市所在のマンション北側駐車場において、ひそかに睡眠導入剤を飲まされて両手をひも様のもので縛られ失禁状態にあった被害者の手首付近をつかんで引っ張り、マンション1階通路内に連行して不法に逮捕した(逮捕罪)。さらに同日、岐阜県揖斐郡のアパート室内において、被害者に対し殺意をもってその頸部をベルト様のもので絞め、頸部圧迫による窒息により死亡させて殺害した(殺人罪)。 【争点】 第一の争点は、被告人が被害者を不法に逮捕したといえるかである。弁護人は、被害者の手には単に何かが掛かっていただけであり、被害者は自ら進んでマンションに来たと主張した。第二の争点は、被害者が生存中に被告人が殺意をもってAと共に被害者の首をベルトで絞めたといえるかである。被告人は捜査段階では、Aが先に被害者の首をベルトで絞めているのに気付いた後、Aに頼まれてベルトの片端を握り綱引きのように引っ張り合って首を絞めたと自白したが、公判では虚偽の自白であったとしてこれを撤回し、ベルトを数秒から十数秒握っただけで手から抜けたと供述を変遷させた。 【判旨(量刑)】 裁判所は、第一の争点について、ドライブレコーダー映像から被害者の両手首がひも様のもので縛られていたことは間違いなく認められるとし、睡眠導入剤を飲まされ失禁した状態で引っ張られていた被害者が自ら進んで来たとはおよそ考えられないとして、逮捕罪の成立を認めた。第二の争点について、被告人の捜査段階の自白は、右手中指第二関節部の損傷と整合すること、犯行現場での再現に基づく供述でそれなりに迫真性があること、手のけがを撮影されて言い逃れができないと考えた動機が説得的であることなどから信用できると判断した。他方、公判供述については、死刑になればいいと考えて虚偽自白したとの弁解や、内妻への取材を防ぐためとの弁解はいずれも説得力がないとして退けた。量刑については、被害者とのトラブルは民事裁判等で解決すべきであり犯行を正当化する事情はないこと、強姦・強盗強姦・監禁等で2度服役した前科があること、公判で不合理な弁解に終始し反省の態度が見られないことなどを指摘し、求刑どおり懲役16年を言い渡した。