AI概要
【事案の概要】 本件は,インターネット上で「D」の名称を用い,漫画等の書籍データへのリンクを掲載するリーチサイト「E」を運営・管理していた被告人3名が,共犯者15名と共謀の上,著作権者の許諾を得ずに,漫画の電子データを自動公衆送信可能な状態に置いたとされる著作権法違反(公衆送信権侵害)の事案である(第1事実)。加えて,被告人A及び被告人Bについては,共犯者から依頼を受け,指定したウェブサイトに連続してアクセスし,サーバに負荷をかける攻撃用プログラム(いわゆるDDoSスクリプト)を作成したとして,不正指令電磁的記録作成罪(刑法168条の2第1項1号)にも問われた(第2事実)。 リーチサイトとは,違法アップロードされたコンテンツそのものを蔵置せず,外部サーバに置かれたファイルへのURLを集約して一覧提供する形態のサイトを指す。直接ファイルをサーバに置かないことから,従来は著作権侵害の幇助犯にとどまるとの議論もあったが,本件ではサイトのサーバ内に書籍データの所在を示すURLを記録・蔵置し不特定多数に自動公衆送信可能な状態に置いた行為が公衆送信権侵害の正犯として捉えられている点に特徴がある。期間は平成28年3月から平成29年7月までの約1年5か月にわたり,計48回,著作権者44名,書籍68点に及び,販売価格にダウンロード回数を乗じた金額は約3931万円に達した。被告人らはいずれも起訴事実を認めた。 【判旨(量刑)】 大阪地方裁判所は,被告人Aを懲役3年6月,被告人Bを懲役3年,被告人Cを懲役2年4月にそれぞれ処し,いずれも実刑を選択した。 裁判所は,本件サイトには利用者による違法アップロードと投稿を助長するための様々な仕組みが設けられていたこと,犯行が常習的・組織的で,サイトが利用者の多い大規模なものに成長していたこと,多数の著作権者に総体として大きな財産的・人格的損害を生じさせたことを指摘し,同種事案の中でも際立って大規模で相当悪質であって結果も重大であると評価した。もっとも,本罪が親告罪であることから,告訴されていない被害額や著作権者以外の関係者の心情を直接量刑上考慮することはできないとし,起訴に係る範囲でその社会的影響の大きさを量刑上考慮するにとどめた点は,親告罪における量刑判断の枠組みとして注目に値する。 被告人Aは本件サイトを開設し運営・管理全般を統括した首謀者であり,かつ攻撃用プログラムの実行犯であって責任が最も重いとされた。被告人Bはサーバを海外に移行する提案・契約・保守管理を担って犯行を下支えし,広告掲載により経済的利益も得ていた上,第2事実を被告人Aに依頼し対価も得ており,被告人Aに準じて責任が重いとされた。被告人Cは投稿管理役を担い,自ら違法アップロードも行うなど常習性が認められ,役割は大きいと評価された。いずれも反省・贖罪寄付・家族の監督等の酌むべき事情はあるものの,刑の執行を猶予する余地はないとして実刑が選択されている。