プログラム著作権確認請求並びに著作権侵害差止請求事件
判決データ
- 事件番号
- 平成30ワ13092
- 事件名
- プログラム著作権確認請求並びに著作権侵害差止請求事件
- 裁判所
- 東京地方裁判所
- 裁判年月日
- 2019年2月5日
- 裁判官
- 沖中康人、横山真通、奥俊彦
AI概要
【事案の概要】 本件は、業務用ソフトウェア「BSS-PACK」に関するプログラム著作権の帰属が争われた事件である。原告ビーエスエス社は、平成2年から平成9年頃にかけて各種業務用ソフトウェア・パッケージ群である「BSS-PACK」を開発し販売していたほか、これをERPシステムに発展させた「BSS-PACK」を平成9年に開発して販売していた。原告ビーエスエス社は、この中の一部プログラムについて著作権法上の創作年月日の登録を受けていた(登録済みプログラム)。 原告ビーエスエス社は、平成18年3月、訴外サンライズ社との間で、事業継続支援に関する合意書を作成し、同社が保有する登録済みプログラムその他の著作物及びこれに関する著作権等一切の権利を代金11億5000万円で譲渡する合意をし、同月30日付でソフトウェア譲渡契約書を締結した。この譲渡契約に基づき、登録済みプログラムの著作権はサンライズ社に移転登録され、その後、平成19年にサンライズ社から株式会社フロンテックへ、平成21年に同社から被告(日本電子計算株式会社)へ順次譲渡された。 被告は平成15年から統合管理パッケージソフトウェア「JIPROS」(被告製品)の販売を開始していたが、原告らは、被告製品が自己の著作権を侵害するとして、BSS-PACKを構成するプログラム全体の著作権が原告らに帰属することの確認と、被告製品の販売差止め・廃棄等を求めて本件訴訟を提起した。なお、原告ソフトウェア部品社らは、同一プログラムをめぐって前訴を提起していたが、平成28年に請求棄却判決を受け、平成29年に知財高裁で控訴棄却が確定している。 【争点】 主要な争点は、(1)本件譲渡契約の全部又は一部が錯誤により無効となるか、(2)非登録プログラムに係るサンライズ社の履行請求権が消滅時効にかかっているか、(3)被告による著作権侵害の有無、の3点である。原告らは、譲渡契約の対象は登録済みプログラムに限られるとの認識であり、非登録プログラムやその著作権を譲渡する意思はなかったとして要素の錯誤を主張し、さらに協業・支援が約束されていたのに1年で解消されたことが動機の錯誤に当たると主張した。 【判旨】 東京地裁は原告らの請求をいずれも棄却した。裁判所は、本件合意書及び本件譲渡契約書の記載内容から、原告ビーエスエス社とサンライズ社との間では、BSS-PACKに係る全事業を全従業員ごと指定会社に移転させ、その事業に係るプログラムについての全ての権利をサンライズ社に譲渡することが合意されたと認定した。したがって、本件譲渡契約の対象には登録済みプログラムのみならず非登録プログラムも含まれ、著作権法27条・28条に規定する権利(翻訳・翻案権、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)を含む全ての権利が譲渡対象とされたと認められる。 そのうえで、原告ビーエスエス社において非登録プログラムの著作権を譲渡する認識・意思を欠いていたとは認められず、錯誤無効の主張は前提を欠くと判示した。また、動機の錯誤の主張についても、本件合意書にはサンライズ社の支援の具体的内容や期間は記載されておらず、長期間の支援への期待が契約締結の動機となっていたとしても、その具体的内容・期間がサンライズ社に表示されたとは認められないとして排斥した。 消滅時効の主張についても、権利移転時期を平成18年4月末日までとする明示的定めがあることから、非登録プログラムの著作権は遅くとも同日までにサンライズ社に移転しており、履行請求権の消滅時効を問題にする余地はないとした。結論として、対象プログラムの著作権はいずれもサンライズ社に移転済みであり原告ビーエスエス社は既に著作権を喪失しているため、著作権侵害の点を判断するまでもなく原告らの請求は理由がないとされた。本判決は、事業譲渡型のソフトウェア取引における譲渡対象の解釈において、契約書の明示的記載のみならず取引全体の構造(事業・従業員・権利の一体的移転)から譲渡範囲を判断した事例として実務的意義を有する。