AI概要
【事案の概要】 本件は、米国ジョージア州オーガスタにあるオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブの運営会社である原告が、コナミホールディングス株式会社(被告)の保有する登録商標「コナミスポーツクラブマスターズ」について、特許庁に対し商標登録無効審判を請求したが、これを認めない審決がなされたため、その取消しを求めた審決取消訴訟である。 本件商標は、「コナミスポーツクラブマスターズ」という文字を標準文字で表したもので、平成26年10月に教育・文化・娯楽・スポーツ関連の役務を指定役務として登録された。原告は、本件商標が「マスターズ」及び「Masters」という引用商標(原告主催の世界的に著名なゴルフ競技会「マスターズ・トーナメント」を表す語)と類似し、役務の出所混同を生じさせるとして、商標法4条1項15号(混同防止規定)、同19号(不正目的による使用防止規定)、同7号(公序良俗違反)に該当すると主張した。 原告は、無効請求対象をゴルフ関連役務に絞り込んだうえで、「マスターズ」は原告主催ゴルフ大会の略称として周知著名であり、本件商標はこれにフリーライドするものであると訴えた。 【争点】 本件商標が商標法4条1項15号(他人の業務に係る役務との混同を生ずるおそれ)、同19号(不正の目的による使用)、同7号(公序良俗違反)に該当するかが主要な争点である。具体的には、引用商標「マスターズ」が有する意味内容と周知性の範囲、被告子会社が運営する「コナミスポーツクラブ」の周知性、両商標の類似性の程度、広義の混同を生ずるおそれの有無などが問題となった。 【判旨】 知財高裁は、原告の請求をいずれも棄却した。 「マスターズ」の語については、原告主催のゴルフ・トーナメントを指す用法に加え、「ワールド・マスターズ・ゲームズ」や「日本スポーツマスターズ」など、熟練者や中高年を対象とした各種スポーツ競技大会を指す語として我が国のスポーツ愛好者の間に広く浸透しており、広辞苑その他の辞書にも複数の語義が掲載されている事実を認定した。また「マスターズ」は英語の「master(名人、達人)」の複数形にすぎず、技を競う競技会の名称として用いることに奇抜性はなく、独創性が高いとはいえないと判断した。 他方、「コナミスポーツクラブ」は、全国に約400の施設を展開し業界首位の売上規模を有する被告子会社のスポーツクラブ名称として、ゴルフを含むスポーツ分野全般で一般需要者に広く知られていると認定した。 そのうえで裁判所は、本件商標を見た者は、冒頭の「コナミスポーツクラブ」に着目して「コナミスポーツクラブが関連する何らかのマスターズ競技ないしその競技大会」と理解するのが合理的であり、「マスターズ」の部分のみに着目して原告主催の大会を連想するとはいえないと判断した。両商標の類似性の程度はそれほど高くなく、原告が日本国内でゴルフ関連事業を大々的に展開している事実も認められないことから、出所混同を生ずるおそれはないと結論づけた。4条1項19号の不正目的や同7号の公序良俗違反についても、いずれも認められないとした。