AI概要
【事案の概要】 本件は、ゴルフの国際大会「マスターズ・トーナメント」の主催者であるオーガスタ・ナショナル・インコーポレイテッド(原告)が、コナミホールディングス株式会社(被告)が保有する登録商標「コナミスポーツクラブマスターズ」(本件商標)について、原告の「MASTERS」等の引用商標と類似することなどを理由に商標登録無効審判を請求したところ、特許庁が請求不成立の審決をしたため、原告が当該審決の取消しを求めた事件である。 本件商標は、「コナミスポーツクラブマスターズ」の片仮名15文字を標準文字で表したもので、第16類(紙類、文房具類等)、第25類(洋服、運動用特殊衣服等)、第41類(スポーツの教授、セミナーの企画・運営等)を指定商品・指定役務として平成26年に登録された。被告は、平成14年頃から「マスターズ水泳」競技会を開催し、平成18年以降「コナミスポーツクラブマスターズ水泳競技会」を毎年開催してきた実績を背景に本件商標を出願したものである。原告は、本件商標の指定商品・役務のうちゴルフに関連するものについて無効審判を請求したが、特許庁は本件商標と引用商標は非類似であり、混同のおそれもないとして請求を退けた。 【争点】 争点は、本件商標が、(1)引用商標と類似し商標法4条1項11号に該当するか、(2)原告の業務に係る商品・役務と混同を生ずるおそれがあり同項15号に該当するか、(3)他人の周知商標に類似する商標を不正の目的で使用するものとして同項19号に該当するか、(4)公序良俗に反するとして同項7号に該当するかである。中心的争点は、本件商標から「マスターズ」の部分を分離抽出して引用商標と比較できるか、「マスターズ」の語から原告主催のゴルフ・トーナメントの観念のみが生じるか否かである。 【判旨】 知財高裁は原告の請求を棄却した。 まず「マスターズ」の語義について、原告主催のゴルフ・トーナメントのみならず、広辞苑等の辞書にも「ワールド・マスターズ・ゲームズ」や「中高年のための競技会の総称」といった複数の語義が掲載されており、現に「日本スポーツマスターズ」「マスターズ陸上」「マスターズ水泳」など、熟練者ないし中高年を対象とする各種スポーツ競技大会の名称として広く使用されている事実を認定した。他方、「コナミスポーツクラブ」は被告子会社が全国約180施設・会員50万人超の規模で運営する周知著名なスポーツクラブの名称であると認定した。 その上で、本件商標は同一書体で等間隔に配置された一連一体の構成であり、周知な「コナミスポーツクラブ」の部分が強く支配的な印象を与えるのに対し、「マスターズ」の部分は特定の出所を表す識別標識として機能するものではなく、本件商標全体からは「コナミスポーツクラブが関連する何らかのマスターズ競技ないしその競技大会」の観念が生じると判示した。したがって本件商標と引用商標は外観・称呼・観念いずれにおいても非類似であり、法4条1項11号に該当しないとした。 混同のおそれ(同項15号)についても、両商標の類似性の程度は高くなく、「マスターズ」は英単語「master」の複数形にすぎず独創性も高くないこと、原告は日本国内でゴルフ競技会を主催しておらず関連商品事業の立証も不十分であることから、混同のおそれは認められないとした。フリーライドの意図(同項19号)および公序良俗違反(同項7号)の主張も、前提を欠くとしていずれも退けた。 本判決は、複数語義を有する語を含む結合商標について、構成要素の周知性と分離観察の可否を丁寧に分析した事例として、商標実務上の参考となる。