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知財

審決取消請求事件

判決データ

事件番号
平成29行ケ10200
事件名
審決取消請求事件
裁判所
知的財産高等裁判所
裁判年月日
2019年2月18日
裁判官
鶴岡稔彦高橋彩寺田利彦

AI概要

【事案の概要】 本件は、特許無効審判における不成立審決の取消しを求めた審決取消訴訟である。被告は、「回転数適応型の動吸振器を備えた力伝達装置および減衰特性を改善するための方法」に関する特許(特許第5473933号、平成19年11月29日ドイツ優先権主張、平成26年2月14日設定登録)を保有していた。本件特許に係る発明は、自動車のトルクコンバータなどに用いられる力伝達装置に関するもので、油で充填された室内に配置された振動減衰装置と、これに連結される遠心振り子式の動吸振器を備え、動吸振器の有効次数を駆動装置の励振の次数よりも「所定の次数オフセット値」だけ大きく設計することで、油中での固有振動数低下を補償し、効果的に振動を減衰させることを特徴としていた。 原告は平成28年8月、本件特許について特許庁に無効審判を請求し、引用発明(米国特許等に記載された流体式トルクコンバータや遠心振り子式動吸振器)との対比から進歩性欠如、サポート要件違反、明確性要件違反を主張した。特許庁は平成29年10月、「油影響に関連して」動吸振器を設計する構成(油影響要件)は当業者が容易に想到できたとはいえず、サポート要件等にも適合するとして審判請求を不成立とする審決をしたため、原告が審決取消しを求めて本訴訟を提起した。 【争点】 主たる争点は、本件発明と引用発明との相違点である「油影響に関連して、駆動装置の励振の次数より所定の次数オフセット値だけ大きい有効次数に設計されている」との構成(油影響要件に基づくオーバーチューニング)が当業者にとって容易想到であったか、及び特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するかである。原告は、動吸振器を油中で動作させると固有振動数が低下することは本件優先日以前から技術常識であり、これを踏まえ幾何学的次数を励振の次数より大きく設計(オーバーチューニング)することは当業者が容易に想到できたと主張した。被告は、液体中での振動数低下の知見は単振り子に関するもので動吸振器には当てはまらず、むしろ振幅が小さい線形挙動下ではイーブンチューニング(一致させる設計)が最適であるのが技術常識であったと反論した。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、審決を取り消した。 裁判所は、まず本件発明の「油影響に関連して…設計されている」との要件について、特許請求の範囲には「所定の次数オフセット」の具体的設定手法の特定がなく、本件明細書の記載を参照しても、結局は「油影響を受ける状況下で動吸振器の次数が低下することから、任意の値の次数オフセットによりオーバーチューニングする」という程度の意味に解されるとした。そのうえで、本件優先日以前から、液体中において振り子の固有振動数が幾何学的に計算される値より低下することは複数の文献に示される周知事項であり、動吸振器に用いられる遠心振り子も振れにより周期運動をする点で単振り子と共通する以上、当業者は油中において固有振動数が低下することを予測し得たと判断した。したがって、油の影響による固有振動数低下を補償するため、任意の次数オフセットによりオーバーチューニングを採用することは当業者が容易に想到し得たものであり、進歩性を認めた審決の判断は誤りであるとした。 さらにサポート要件についても、本件明細書には油影響から結果的に生じる作用を考慮した次数オフセットの記載はあるものの、特許請求の範囲は任意に設定された次数オフセットを広く含むところ、そのような任意値の場合についてまで当業者が発明の課題を解決できると認識できる記載はないとして、サポート要件違反を認めた。以上より、無効理由1及び6によって本件特許は無効とされるべきであり、これを否定した審決は取消しを免れないとして、審決を取り消した。

※ この概要はAIが判決全文をもとに自動生成したものです。内容の正確性には十分注意していますが、誤りが含まれる可能性があります。正確な内容は原文をご確認ください。
判例データの一部は CaseLaw LOD(国立情報学研究所、CC BY 4.0)を利用しています。