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【事案の概要】 学校法人である被告が設置する淑徳大学国際コミュニケーション学部文化コミュニケーション学科の教員として勤務していた原告ら3名(教授)は、平成29年2月、被告から、同学部廃止を理由として就業規則14条4号(「やむを得ない理由により事業を縮小または廃止するとき」)に基づき同年3月末日付けで解雇する旨の通知を受けた。被告は、同学部3学科の学生募集を順次停止し、これと時期を合わせて東京キャンパスに新たに人文学部(表現学科・歴史学科)を新設したが、同学部の専任教員13名は原則全員新規採用とし、原告らには配置転換も応募機会も与えなかった。原告らは、本件解雇は解雇権の濫用として無効であると主張し、労働契約上の地位確認と解雇後の月例賃金・期末手当・遅延損害金の支払を求めて提訴した。 【争点】 主要な争点は、学部廃止を理由とする本件解雇の有効性である。具体的には、原告らの所属学部・職種が国際コミュニケーション学部の大学教員に限定されていたか、仮に限定されていたとしても人員削減の必要性・解雇回避努力・被解雇者選定の合理性・解雇手続の相当性を含む整理解雇の諸要素に照らして解雇が客観的合理性・社会通念上の相当性(労働契約法16条)を備えていたかが問われた。特に、学部廃止と同時に近接分野の新学部を新設しながら旧学部教員を排除する人事は解雇回避義務との関係でどう評価されるかが焦点となった。そのほか、将来の賃金請求に係る訴えの利益、未払賃金額(昇給の扱い・期末手当の債権発生時期)も争われた。 【判旨】 東京地裁は、原告らの所属学部の限定の有無にかかわらず、労使双方に帰責性のない経営上の理由による解雇である以上、整理解雇の4要素と再就職支援等の諸事情を総合考慮して有効性を判断すべきとし、本件解雇を解雇権濫用として無効と判断した。すなわち、被告の財務状況は資産約926億円、自己資金比率約94%、毎年度黒字という極めて良好な状態で、原告らを解雇しなければ経営危機に陥る状況ではなく、人員削減の必要性は高度ではなかった。解雇回避努力についても、被告は原告らを人文学部へ異動させれば解雇を回避できたにもかかわらず、同学部教員を原則全員新規採用とすることを決定し、応募機会すら与えず、附属機関に学部非所属で所属する教員の先例があるのに、学部に属させずに一般教養科目を担当させる等の措置も検討しなかった。さらに、人文学部教員確定後も原告らには個別相談する旨を繰り返し述べ続けて契約存続の期待を持たせ、解雇回避の機会を意図的に失わせた疑いがあると厳しく指摘した。加えて、解雇の必要性や配置転換不能の理由を十分説明せず、組合の団体交渉要求も拒否しており、手続の相当性も欠くとした。本判決は、学部廃止に伴う大学教員の整理解雇について、法人全体の財務健全性と新設学部への再配置可能性を重視し、経営裁量を理由とする新規採用方針にも解雇回避義務が優越することを示した点で、大学教員の雇用保障に関する実務上の意義が大きい。