消費税更正処分等取消請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、不動産賃貸業を営む控訴人(納税者)が、東京都世田谷区所在の共同住宅(以下「本件建物」)を取得したことに関する消費税等の仕入税額控除の可否が争われた事案である。控訴人は、平成25年6月28日に本件建物の売買契約を締結し、同年7月31日に売買代金の支払、建物の引渡し及び所有権移転登記を受けた。契約上、代金支払と引渡し・登記は同時履行とされ、固定資産税の負担や収益の帰属も同年7月31日の経過をもって売主から買主に移転するものとされていた。 控訴人は、本件建物の取得及びその登記申請に係る司法書士報酬について、売買契約締結日である平成25年6月28日を「課税仕入れを行った日」として、同年6月10日から同月30日までの課税期間(以下「本件課税期間」)の消費税等の確定申告において、これらを当該課税期間の課税仕入れに含めて仕入税額控除を行った。 これに対し処分行政庁は、本件建物の取得に係る課税仕入れを行った日は引渡しを受けた同年7月31日であり、本件課税期間に属しないとして、消費税等の更正処分、過少申告加算税の賦課決定処分、及びこれに伴う法人税の各更正処分を行った。控訴人はこれらの処分の取消しを求めて出訴したが、原審東京地裁は請求を棄却したため、控訴した。 【争点】 消費税法30条1項1号にいう「課税仕入れを行った日」とは、固定資産の売買契約について、いつの時点を指すかが中心的争点である。具体的には、売買契約の締結日(効力発生日)とするか、それとも引渡日とするかが争われた。控訴人は、基本通達11-3-1が準用する同通達9-1-13を根拠に、納税者が契約効力発生日と引渡日のいずれかを選択できると主張した。 【判旨】 控訴棄却。本判決は、消費税が付加価値に課税する仕組みであり、仕入税額控除は取引段階における税負担の累積を防止する制度であるとしたうえで、消費税法2条1項12号が「課税仕入れ」の定義を仕入れの相手方による課税資産の譲渡等に対応するものに限定していることから、「課税仕入れを行った日」とは、仕入れの相手方において資産の譲渡を行った日と時点を同じくすると解すべきとした。 そして、消費税についてもいわゆる権利確定主義が妥当し、資産の譲渡等による対価を収受すべき権利が確定した日、すなわち同時履行の抗弁等の法的障害がなくなり、対価を収受すべき権利が確定したと法的に評価される日に課税対象となると判示した。 本件では、売買代金全額の支払と建物の引渡し及び所有権移転登記手続が同時履行とされ、実際に平成25年7月31日にこれらが履行されていることから、売主が売買代金支払請求権を現実に行使可能となったのは同日であり、対価を収受すべき権利が確定したのも同日であるとした。したがって、本件建物の取得に係る「課税仕入れを行った日」は平成25年7月31日であり、本件課税期間には属しない。 また、司法書士報酬については、登記申請業務の性質は準委任(民法656条、648条2項)であり、委任事務の履行完了日である同年7月31日に報酬請求権が確定したとして、同様に本件課税期間の課税仕入れには含まれないとした。 基本通達の定めについては、契約内容により契約効力発生日に対価収受権が確定したといえる場合に限り、効力発生日を「課税仕入れを行った日」とすることを認める趣旨にすぎず、本件のように効力発生日に権利確定が認められない事案で納税者の恣意的選択を許すものではないとして、控訴人の主張を排斥した。本判決は、消費税の仕入税額控除における帰属時期について、権利確定主義を明確に採用した実務上重要な判断である。