AI概要
【事案の概要】 被告会社は、札幌市で指定就労継続支援A型事業所C1を運営していた株式会社であり、被告B1はその代表取締役である。就労継続支援A型とは、通常の事業所で雇用されることが困難な障害者に対し、雇用契約を結んだうえで就労の機会を提供し、知識や能力の向上に必要な訓練を行う福祉サービスである。C1では、サービス管理責任者・生活支援員・職業指導員等のスタッフのほか、知的障害や精神障害を有する利用者が、被告会社と労働契約を締結して古本のネット出品代行やプリザーブドフラワー製作等の作業に従事していた。 被告会社は設立以来赤字経営が続き、社会保険料の滞納による預金差押えも受けていた。加えて、平成29年4月からは、自立支援給付を利用者の賃金に充当することを原則禁止する省令改正が施行される予定であった。さらに平成29年3月、スタッフの一人が退職することをきっかけに、サービス管理責任者兼管理者である原告A9が被告B1に対し「スタッフ全員も辞める」旨発言し、その趣旨を被告の夫を介して重ねて伝えたため、被告B1はC1の運営継続は困難と判断した。被告会社は平成29年3月30日、利用者・スタッフ全員に解雇予告通知書を交付し、同年4月30日付けで解雇したうえC1を閉鎖した。これに対し原告らが、解雇の無効を主張して地位確認・未払賃金の支払を求めるとともに、障害者への配慮を欠いたとして民法710条に基づき被告会社に、会社法429条1項に基づき被告B1に、それぞれ慰謝料の支払を求めた。 【争点】 本件解雇が整理解雇の法理により無効となるか、また障害者総合支援法の趣旨に照らし被告らが利用者に対して負う配慮義務に違反したか、などが争われた。 【判旨】 裁判所は、使用者が事業そのものを廃止して行う解雇については、通常の整理解雇における4要素をそのまま適用するのではなく、事業廃止の必要性と解雇手続の妥当性を総合的に考慮すべきとした。そのうえで、被告会社は設立以来継続的に損失を計上しており、省令改正や職員退職により経営環境がさらに悪化する見込みであったこと、新規スタッフの募集も奏功しなかったことから、事業廃止の必要性を認定した。また、1か月前の解雇予告、説明会の開催、受入先事業所約30人分の確保等の事情から、解雇手続の妥当性も肯定し、本件解雇を有効と判断した。原告らは株式会社であっても公益目的事業を営む以上厳格な判断をすべきと主張したが、障害者総合支援法は従業員等の解雇について特段の規制を置いていないとしてこれを退けた。 他方、裁判所は、被告会社が利用者の障害特性を把握していた以上、体調悪化を避けるため障害特性に応じた配慮を行う義務を負っていたとし、解雇予告通知書の配布から説明会までの約20日間、個別の丁寧な説明や質疑応答の機会が設けられなかったことは同義務違反に当たると認定した。代表取締役である被告B1にも、唯一の取締役として利用者の特性を認識していた点で重過失があるとして、会社法429条1項の責任を認めた。結論として、利用者である原告8名に対し、被告会社・被告B1それぞれにつき慰謝料5万円と弁護士費用5千円の計5万5千円を不真正連帯債務として支払うよう命じ、スタッフとして勤務していた原告A9・原告A3の請求及びその余の請求はいずれも棄却した。