不認定処分取消等請求控訴、同附帯控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 平成31行コ26
- 事件名
- 不認定処分取消等請求控訴、同附帯控訴事件
- 裁判所
- 東京高等裁判所
- 裁判年月日
- 2019年10月30日
- 裁判官
- 川神裕、石井浩、岡田幸人
AI概要
【事案の概要】 本件は、終末期における「リビング・ウィル(尊厳死の宣言書)」の普及啓発や、会員から提出された宣言書の登録管理を行う一般財団法人である被控訴人(日本尊厳死協会を前身とする法人)が、その事業は公益目的事業に該当するとして、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(認定法)に基づき公益認定を申請したところ、内閣総理大臣から平成28年12月9日付けで「公益目的事業とは認められない」として不認定処分を受けたため、その取消しと、内閣総理大臣に対し認定処分をするよう義務付けることを求めた事案の控訴審である。 公益認定を受けると、法人税・所得税・相続税等で税制上の優遇措置を受けられるほか、社会的信頼が高まる効果もあることから、対象事業が認定法2条4号の「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するもの」に該当するかが審査される。国側は、宣言書による延命措置の中止等を国が積極的に評価したと受け取られ、医師が患者の真意を見誤ったり刑事・民事・行政上の責任を問われる危険が増すなどとして、本件登録管理事業を公益目的事業と認めることは相当でないと主張した。 原審(東京地裁)は、不認定処分の取消請求は認容したが、義務付け請求は棄却したため、国が敗訴部分を不服として控訴し、被控訴人が敗訴部分を不服として附帯控訴した。 【争点】 主たる争点は、本件登録管理事業が認定法2条4号の「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するもの」に該当するか、そして内閣総理大臣の不認定判断に裁量権の逸脱・濫用があるかである。あわせて、義務付け訴訟については、認定法5条各号(経理的基礎・技術的能力等)の要件該当性が一義的に明らかであり、行政庁が認定処分をすべきことが明白といえるか(行政事件訴訟法37条の3第5項の本案要件)も問題となった。 【判旨】 東京高裁は、本件控訴及び附帯控訴をいずれも棄却した。 まず公益認定に係る裁量の範囲について、認定法は主務官庁ごとの公益判断の不統一等を是正するため、判断要素をできる限り明確化したうえで事前に公表する仕組みを採用しており、行政庁の裁量権は広範とはいえず、事前公表された判断基準(本件ガイドライン)に沿って社会通念に従い判断されるべきものであるとした。そのうえで、判断が重要な事実の基礎を欠くか、社会通念に照らし著しく妥当性を欠く場合には裁量権の逸脱・濫用として違法となるとの枠組みを示した。 そして、公益認定は申請事業が公益目的事業であることを認定する趣旨にとどまり、国が延命措置の中止等について特定の立場を支持したり、リビング・ウィルを一般的認識以上に重視する方針を示したりするものではなく、社会一般もそのように受け取るのが通常であると認定した。被控訴人宣言書は、延命措置選択の判断を一律に排除するものではなく、医師等による再度の意思確認を拒むものでもないから、これを公益目的事業と認めても、会員の自己決定を損なったり、医師の法的責任リスクを増大させるとはいえないと判断した。むしろ、リビング・ウィルの存在は、家族間の意思対立の場面で医師を不当な責任追及から守る積極的役割も果たし得るとした。 以上から、本件登録管理事業は「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するもの」に該当し、これを否定した本件処分は社会通念に照らし著しく妥当性を欠き、裁量権の範囲を逸脱した違法なものであるとして、処分取消請求を認容した。他方、認定法5条2号の「公益目的事業を行うのに必要な経理的基礎及び技術的能力を有すること」という要件は、本件ガイドラインを参照してもなお抽象的部分が多く、認定処分をすべきことが同条の規定から明らかであるとまではいえないとして、行政事件訴訟法37条の3第5項の本案要件を満たさず、義務付け請求は理由がないとした。