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【事案の概要】 本件は、被告人が共犯者2名と共謀の上、多額の現金をひったくった窃盗事件である。平成30年11月8日午後2時22分頃、名古屋市内のビル北側出入口付近において、共犯者Bが、同出入口に向かって歩いていた被害者C(当時78歳)の後方から近づき、被害者が手に持っていた現金3757万6628円および実印等2点在中のかばん1個(時価合計約10万円相当)をひったくって窃取したものである。 被告人は、雇主である共犯者Aから犯行計画を知らされて本件に加担し、Aの指示に従い、金融機関所在場所付近から犯行現場付近まで、被害者らを追跡するなどの役割を分担した。被告人は、本件犯行後、Aから200万円を分け前とされたが、借金返済等の名目で控除された残りの40万円のみを受け取ったと供述している。 なお、被告人は、平成30年9月に本件と同種の窃盗罪により懲役1年6月・執行猶予5年の判決を受けたばかりであり、その言渡しから2か月足らずのうちに本件犯行に及んでいた。本件審理時、被告人は確定裁判に係る別罪により懲役1年8月の実刑判決を受けていた。検察官の求刑は懲役4年6月であった。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人を懲役2年10月に処した。 量刑上、不利な事情として、被害額が極めて多額である点、被害者らが金融機関から多額の現金を運搬するとの事前情報に基づき敢行された計画性の高い犯行である点を悪質性として指摘した。被害回復の措置も受けていない被害者が厳重処罰を求めるのは当然であるとした。また、同種前科の執行猶予期間中、しかも判決言渡しからわずか2か月足らずで本件に及んでおり、被告人の意思決定は非難に値すると評価した。 他方で、酌むべき事情として、被告人はAと比べて地位が下であり、ひったくりの実行行為自体は担当していないこと、分け前の割合が被害額全体に比して多いとはいえない上、被告人がAから高利で借金をしたかたちとされ、受け取った40万円も後日借金返済等の名目で取り上げられて手元に残らず、財産的利益を直接的・実質的に享受したとは言い難いこと、捜査段階の途中からAの関与を含めて事実を詳しく供述し、反省の情を示していること、母親が身元引受を約束していることなどを考慮した。 これらの事情を踏まえても、被告人の刑事責任は重く、本来相当長期間の刑期となるべき事案であるとした。もっとも、本件が確定裁判前の余罪であり、別罪と併合審判された場合と対比して全体としての刑期が過酷なものとならないよう配慮する必要があること、前記執行猶予が取り消されて懲役1年6月を併せて服役することになるが初めての服役であることなどを総合考慮し、主文の程度の刑期が相当であると判断した。