AI概要
【事案の概要】 原告は衆議院議員で政党の副党首を務める政治家である。被告は政治評論家であり、平成31年初め頃に「ギクシャクし続ける日韓関係」と題するコラムを執筆し、新聞社に提供した。このコラムは平成31年2月6日付けの新聞朝刊に掲載された。 問題となったのは、コラム中の「徴用工に賠償金を払えということになっているが、この訴訟を日本で取り上げさせたのはA議員。日本では敗訴したが韓国では勝った。A氏は実妹が北朝鮮に生存している。政争の具に使うのは反則だ。」との記載部分である。 しかし、実際には原告が徴用工訴訟を日本で取り上げさせたという事実はなく、原告の実妹が北朝鮮に生存しているという事実もなかった(そもそも原告には妹がいない)。原告は日本で生まれ育ち、日本国籍を有する者である。 原告は、本件記載により名誉権を侵害されたと主張し、被告に対し、不法行為に基づき慰謝料300万円及び弁護士費用相当額30万円の合計330万円並びに遅延損害金の支払を求めた。 【争点】 本件記載が原告の社会的評価を低下させ名誉毀損に当たるか、慰謝料等の損害額はいくらが相当か。 【判旨】 裁判所は、名誉毀損の成否について、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すべきとした最高裁判例(最判昭和31年7月20日)を参照し、本件記載は、徴用工訴訟を日本で取り上げさせたのが原告であり、原告の実妹が北朝鮮に生存しているとの事実を摘示した上で、原告が政争に勝つための道具として徴用工訴訟を利用することが反則であるとの論評を加えたものと解した。 その上で、本件記載は、衆議院議員という「全国民を代表する」地位(憲法43条1項)にある原告が、身内を利するため又は公私を混同させて政治活動を行っているとの印象を与えるものであり、原告の政治家としての社会的評価を著しく低下させるものであると判断した。したがって、本件行為は原告に対する不法行為を構成し、被告は損害賠償責任を負うとした。 損害額については、①本件コラムの内容が原告の政治家としての社会的評価を著しく低下させるものであること、②新聞という多数の読者が想定され類型的に信憑性が高いとされる媒体に掲載されたこと、③被告が本件記載の内容の真偽を調査・確認することなく執筆に至ったこと、④記載の主要部分である徴用工訴訟関係の事実及び実妹の北朝鮮生存の事実が実際には存在しないことを指摘し、平成31年2月9日に訂正記事が掲載されたことを考慮しても、慰謝料300万円及び弁護士費用相当額30万円が相当であるとして、原告の請求を全額認容した。