AI概要
【事案の概要】 本件は、強姦の被疑事実で逮捕されたものの、処分保留で釈放され、その後嫌疑不十分を理由に不起訴処分となった原告が、検索サイト「Google」を運営する被告(米国法人)に対し、検索結果の削除等を求めた事案である。 原告は、事件当時からある特定の地位にあった人物で、平成▲年▲月▲日に強姦の被疑事実により逮捕・勾留され、同年中に処分保留で釈放、地方検察庁により嫌疑不十分を理由に不起訴処分とされた。ところが、Googleの検索ボックスに原告の氏名等を入力して検索すると、原告の逮捕事実等が記載されたウェブサイトのURL、表題、抜粋が検索結果として表示され続けていた。 原告は、逮捕から7年以上経過した平成29年6月、被告に対し検索結果の削除を要請したが、被告は不起訴処分の理由を客観的に示す資料が提出されなかったことなどから削除を拒否した。そこで原告は、人格権に基づく削除請求および被告が削除要請に応じなかったことについて不法行為に基づく損害賠償(慰謝料100万円、弁護士費用30万円の計130万円)を求めて提訴した。原告は職場の同僚や知人から検索結果について尋ねられるなど、社会生活上の不利益を被っていると主張した。 【争点】 本件の主要な争点は、(1)検索結果の削除請求が認められるか(最決平成29年1月31日民集71巻1号63頁の枠組みのもとで、検索結果の表示を維持する必要性と原告が逮捕事実等を公表されない法的利益との比較衡量)、(2)被告が訴外で削除要請に応じなかったことが不法行為を構成するか、である。 【判旨】 札幌地裁は、平成29年最決が示した規範、すなわちプライバシーに属する事実の性質・内容、伝達範囲、被害の程度、本人の社会的地位、記事の目的・意義、社会的状況の変化等を比較衡量し、公表されない法的利益が優越することが明らかな場合に削除が認められるとの基準に基づいて判断した。 本件について裁判所は、強姦罪が重大な犯罪であり、原告の地位を考慮すれば事実は一般に正当な関心の対象であるとしつつ、(1)嫌疑不十分で不起訴処分となり、釈放後7年以上取調べも受けていないことから起訴の現実的可能性が事実上なくなっていること、(2)逮捕報道を知らない人からも逮捕事実を尋ねられるなど、転居先でも無罪推定に反して嫌疑を抱かれる具体的不利益が大きいこと、(3)検索結果には不起訴処分となった事実が併記されているものの、嫌疑不十分は証拠不足にすぎないと受け取られがちで原告の不利益が軽減されるとはいえないこと等を総合考慮し、検索結果の表示を維持する社会的必要性は低く、逮捕事実を公表されない原告の法的利益が優越することは明らかであると判断し、争いのない2、4、5、9項のURL等情報および8項のURL・表題の削除を認めた。 他方、不法行為請求については、平成29年最決の判断枠組みが事例ごとの比較衡量を要し一義的判断が困難であること、原告が訴外交渉で不起訴理由を裏付ける客観的資料を提示できなかったことから、被告が削除義務の存在を認識しなかったことに過失があったとはいえないとして、損害賠償請求を棄却した。原告の請求を一部認容し、訴訟費用の7分の1を被告負担とした。