公務執行妨害,強盗殺人未遂
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、被告人が大型ショッピング施設内の店舗で発泡酒等6点(販売価格合計965円)を万引きし、保安員に現行犯逮捕された後、警察署への連行途中で警察官のけん銃を強奪し、発砲した事案である。平成29年10月20日午後1時53分頃、被告人は福岡県大野城市の店舗で発泡酒等の窃盗(第1の窃盗)を敢行し、店の保安員により現行犯逮捕された。その後、同店1階の保安室において、通報により臨場した福岡県警D警察署の司法警察員F(当時49歳)及び司法巡査G(当時26歳)に身柄を引き渡され、警察署へ連行される際、被告人はFの背後から襟首付近をつかむ暴行を加えるとともに、Fが右腰に装着していた弾丸5発装填の回転弾倉式けん銃を抜き取り、「取ったぞ。撃つぞ」と叫んでFの腰部に銃口を向け、もみ合いの末に2回発砲した。1発目は倒れ込んだFに向けて、2発目は至近距離にいた警察官2名及び保安員Hに向けて発射されたが、いずれも直接命中せず、跳弾によってHが約10日間の加療を要する顔面部切創及び左手熱傷を負うにとどまった。検察官は公務執行妨害及びFら3名に対する強盗殺人未遂罪で起訴した。 【争点】 本件の争点は、①暴行・脅迫の態様(銃口を突き付けながら「取ったぞ。撃つぞ」と叫んだか)、②Fから被告人へのけん銃の占有移転の有無、③けん銃に対する不法領得の意思の有無、④被害者らに対する殺意の有無の4点である。被告人側は、けん銃を手に取ったのは警察官を困らせる目的であり発砲の意図はなかった旨主張し、殺意や不法領得の意思を争った。 【判旨(量刑)】 裁判所は、同僚警察官Gの詳細かつ具体的な供述等に基づき、被告人が「取ったぞ。撃つぞ」と叫んでけん銃をFの腰部に近づけた事実を認定し、Fの反抗を抑圧するに足りる脅迫があったと認めた。また、被告人がけん銃を抜き取った後、引き金に指をかけて把持し続け、Fが取り戻すことが著しく困難であったことから占有移転を肯定した。不法領得の意思については、けん銃の経済的用法には示して脅迫する行為も含まれるとした上、被告人が現に脅迫・発砲に及んだことから、権利者排除意思と利用意思の双方を認定した。殺意については、1発目は倒れ込んだFの方向への発砲であり弾道によっては命中し生命に危険が及ぶ高度の危険性があったこと、2発目も狭い保安室内で跳弾によって被害者らに命中する危険性が高かったこと、引き金を引くには相当な力を要し偶発的発砲は考え難いこと等から、いずれも確定的殺意による発砲と認めた。量刑については、けん銃という殺傷能力の高い凶器を用い3名の生命を危険にさらした点を最も重視しつつ、幸い弾丸がいずれも直接命中せず傷害も比較的軽微にとどまったこと、金品目的の計画的強盗とは異なり警察官の言動に感情的になった突発的犯行であること、積極的な殺害意図までは認め難いこと、同種前科がないこと等を総合考慮し、本件は単独強盗殺人未遂事案の中では中程度の部類と位置付け、求刑懲役20年に対し懲役13年(未決勾留日数中180日算入)を言い渡した。