審決取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、商標登録出願に対する拒絶査定不服審判の不成立審決の取消しを求めた事件である。原告であるカエルム株式会社は、平成28年2月28日、「Violet」の欧文字を横書きにし、モダン・ローマン体に似たデザイン化された書体で表して成る商標(本願商標)について、第9類「電子出版物」、第16類「雑誌、書籍」、第35類の広告関連役務、第41類の電子出版物の提供等、第45類のファッション情報提供等を指定商品・指定役務として登録出願した。 これに対し、特許庁は、本願商標が、「ヴィオレ」の片仮名と「Violet」の欧文字を上下二段に配置した既登録の引用商標(第35類の印刷物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供等を指定役務とするもの)と類似し、かつ、本願商標の指定商品が引用商標の指定役務と類似するとして、商標法4条1項11号に該当することを理由に拒絶査定をした。原告はこれを不服として審判請求したが、特許庁は請求不成立の審決をしたため、本訴を提起した。 【争点】 争点は、商標法4条1項11号該当性の判断の誤りの有無であり、具体的には、(1)本願商標と引用商標の類否、(2)本願指定商品(電子出版物、雑誌、書籍)と引用商標の指定役務中の「印刷物の小売等役務」との類否である。原告は、本願商標はデザイン化された一段構成である一方、引用商標は二段構成のゴシック体であり外観が異なること、本願商標からは英語読みの「バイオレット」の称呼が生じるのに対し、引用商標からは「ヴィオレ」の称呼しか生じないこと、再販制度の下では書籍等の出版と小売は明確に区別されており誤認混同のおそれはないことなどを主張した。 【判旨】 知財高裁は、原告の請求を棄却した。 商標の類否について、引用商標は上段の片仮名が下段の欧文字の読みを示すものにすぎず、「Violet」の欧文字部分が要部であると認定した。「Violet」の英単語は我が国で周知であるため、引用商標を見た取引者・需要者は英語としての語意(すみれ、すみれ色)を想起するものと考えられ、本願商標と引用商標は「Violet」の欧文字部分を共通にし、観念も共通又は類似する。称呼は「バイオレット」と「ヴィオレ」で異なるが、構成文字や観念の共通性に比べれば影響は限定的であり、離隔的観察においては出所の誤認混同のおそれがあると判断した。 商品・役務の類否については、本願指定商品と引用小売役務はいずれも書店又はオンライン書店において提供され、需要者の範囲が一致すること、さらに出版社自身がウェブサイトや実店舗で書籍を販売する例や、書店経営会社が出版事業を行う例(KADOKAWA、小学館、紀伊國屋書店等)が多数認められ、出版事業と販売事業の区別が流動化していることから、両者は類似すると認めた。原告が主張する再販制度を根拠とする誤認混同否定論については、再販制度があっても書店の名称等が出所識別機能を果たさなくなるわけではなく、膨大な商品を扱う書店の実情からすれば需要者が題号や商標だけを見て出所識別を即断することも十分考えられるとして退けた。 本判決は、電子出版の普及と出版流通業界の再編という取引実情の変化を踏まえ、従来区別されてきた出版と書籍小売との間の営業主体の共通性を認定した点に実務的意義がある。