販売差止め及び損害賠償等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、健康器具・衣料用繊維製品の製造販売を業とする原告(株式会社ジェイ・エス)が、美容器具・健康器具の製造販売を業とする被告会社(株式会社ユメロン黒川)及びその代表取締役である被告Aに対し、原告の意匠権侵害及び不正競争防止法違反を理由として、差止め、廃棄、損害賠償金4億4748万円の一部である1000万円の連帯支払、並びに日本経済新聞への謝罪広告の掲載を求めた事案である。 原告は、平成18年6月に登録された意匠登録第1276735号のアイマスクに係る部分意匠権を有していた。被告会社が平成28年10月頃から製造販売する「あたためほぐしアイマスク」について、原告は本件意匠権の侵害に当たると主張した。また、原告は平成13年7月頃から「イオンドクター」ブランドでレッグウォーマー等を販売しており、その形態の特徴(表裏ともにふわふわした厚みのある筒状で、等間隔のシャーリングが施されている点)が原告の商品等表示として周知・著名になっていると主張し、被告会社のアーム&レッグウォーマー等の製造販売は不正競争防止法2条1項1号・2号の不正競争行為に当たるとした。さらに、被告Aは会社法429条1項による取締役の第三者責任を負うと主張した。 【争点】 主な争点は、本件登録意匠とイ号意匠が類似するか(争点1)、本件原告商品の形態が「商品等表示」に当たるか(争点2)、被告Aが会社法429条1項に基づく責任を負うか(争点5)等であった。 【判旨】 東京地方裁判所は、原告の請求をいずれも棄却した。 意匠の類否について、裁判所はまず需要者を快適な睡眠に関心を持つ消費者と認定し、出願時公知であった意匠(アイマスクの耳かけストラップ中間部に移動可能なビーズが一箇所設けられた形態等)を踏まえて要部を認定した。その結果、本件登録意匠の構成のうち「耳かけストラップの中間部及び先端部の二箇所にビーズが現れる形態」は公知意匠にない特徴であり、強く需要者の注意を惹く要部に含まれると判断した。これは、原告が出願経過において拒絶理由通知に対する意見書で先端部のビーズの存在を引用意匠との相違点として主張した経緯によっても裏付けられるとした。これに対し、イ号意匠は中間部にのみビーズが現れ先端部にビーズがない形態であるから、両意匠を全体として観察した際に看者に対して異なる美感を起こさせるものであり、類似しているとは認められないとして、意匠権侵害を否定した。 商品等表示該当性について、裁判所は商品形態が「商品等表示」に該当するためには特別顕著性と周知性の双方が必要であるとの枠組みを示した上で、本件特徴ないしこれと極めて類似した特徴を有するレッグウォーマーが平成23年ないし24年頃から複数のメーカーにより市販されていた事実を認定し、本件原告商品の形態が他に類を見ない顕著な特徴(特別顕著性)を有していたとは認められないとして、商品等表示性を否定した。 また、被告会社の意匠権侵害及び不正競争防止法違反がいずれも認められない以上、被告Aの会社法429条1項に基づく責任もその前提を欠くとして否定された。 本判決は、部分意匠の要部認定における公知意匠の参酌と出願経過禁反言の適用、及び商品形態の商品等表示性判断における同種商品の市場実態の重視を示したものとして、知的財産実務上の意義を有する。